トップページ佐々木俊尚氏著書第十一章 ウェブ2・0――インターネットの「王政復古」

第十一章 ウェブ2・0――インターネットの「王政復古」

▼数億倍になった世界の情報量

 iPodの登場は日本にとって、半導体、OSに次ぐ第三の敗戦ともいえる事態になろうとしている。

Photo_9 経済産業省の情報経済企画調査官、八尋俊英は話した。
「ソニーのウォークマンの方が、技術的にはおそらく優れていた。だがiPodは端末自体の性能ではなく、どれだけ視聴できる音楽やビデオを大量に持ってい て、それをいかにして楽しめるかという仕組みでウォークマンを凌駕していたわけです。そういうデータベース的な付加価値があるから、同業他社の同じような 性能の端末よりもiPodは高く買ってもらえた。今やそういう時代になっているのだと思う」
 iPodの成功に、八尋は触発された。そして、経済産業省としての新たな戦略を考え始めたのである。
 インターネットが一般社会に登場してから十年。ネット上に蓄積される情報は、加速度的に増えた。米カリフォルニア大バークレー校のピーター・ライマンと ハル・ヴァリアンは二〇〇三年十月、世界の情報量を調べた報告書をまとめている。それによれば、二〇〇二年に保存された情報の量は、五エクサバイトに上っ ているという。エクサバイトというのは耳慣れない単位だ。現在市販されているパソコン用のハードディスクの主流は、三〇〇ギガバイト程度。一〇〇〇ギガバ イトが一テラバイトで、一〇〇〇テラバイトが一ペタバイト。そして一〇〇〇ペタバイトが一エクサバイトになる。つまり市販しているハードディスクの千七百 万個分の情報が世界に存在しているということになる。これは二〇〇二年の数値だから、おそらく現在はさらに増えていることが予想される。
 ハードディスク千七百万個分というのは、それほど大きな数字には見えないかもしれない。世界には二億台以上のパソコンが動いているし、グーグルは検索エンジンのデータベースを作り上げるため、二万~三万台のパソコンを同時に稼働させていると言われている。
 しかし古い時代には、世界に存在する情報量はもっと少なかった。たとえば十五世紀にヨーロッパで出版された書籍はわずか八千五百点で、情報量にすれば数ギガバイト程度しかなかった。それから比べれば、現在の世界の情報量は数億倍に増えていることになる。
 前著『グーグル』でも書いたが、グーグル日本法人社長の村上憲郎は、二〇〇六年一月三十一日に開催された「インターネット・ネクストステージ」というシンポジウムで、こう話している。
「グーグルは、世界の全データをオーガナイズする(体系づける)という目標を掲げている。世界には五〇〇万テラバイトの情報量があり、これまでにデータ化 が完了しているのはまだ一パーセント。これをどのように達成するのか、グーグル社内で議論を重ねている。(中略)しかし二〇〇九年にはおそらく、『人類の 知』と呼ばれるような分野のデータはすべて検索可能になっている。透明性の高いパーソナライズを実現するために、ユーザー自身のことを教えてもらいたい。 そして、何かを聞かれたらグーグルが即答できる環境を作りたい」

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「ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか」(佐々木俊尚)

編注:佐々木俊尚氏と文春新書の協力を得て、「ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか」の原稿の一部を掲載いたします。(湯川)

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