SMM(ソーシャル・メディア・マーケティング)とSMO(ソーシャル・メディア・オプティマイゼーション)
SMOの根本にあるのは、「ソーシャルメディアへの露出度を意識した場合に既存のサイトをどう改善できるかを具体的に考えて実践しよう」という考え方で ある。そして、SMM/SMOというアプローチにおける両概念の関係性は、SEM/SEOのアプローチにおけるそれと非常に似通っている。ここでは、まず はそうした観点で情報を整理してから、SMOの具体的な内容を見ていくことにする。
SMM(ソーシャル・メディア・マーケティング)
SMMとは、ソーシャルメディアをマーケティングメディアの一つとして捉え、そこでマーケティングを展開すること全般を指す。つまり、前々節「ソーシャルメディア時代のマーティング」で整理したことが、ほぼそのままSMMの意味でもある。
ソーシャルメディアだけにおけるマーケティングを検討することもあれば、オフラインも含めた包括的なマーケティング・キャンペーンの一部としてソーシャルメディアを活用するアプローチもあるだろう。
もう少し理解を深める意味で、2006年秋の米国のネットマーケ・ブログ論壇でも何度か参照された情報を紹介しておきたい。
健康と社会変革に関する米国政府系の非営利組織に勤務するNedra Weinreich氏は、自身のブログの2006年9月6日のエントリで、彼女の専門分野で従来から用いられてきた「ソーシャル・マーケティング」という専門用語との混乱を整理する目的で、「ソーシャル・メディア・マーケティング」という用語あるいはそのプロトタイプとしての「ソーシャル・マーケティング」という用語の違いを一覧表で整理した。彼女の専門分野における「ソーシャル・マーケティング」とは、「人々の健康を増進したり、社会をより良いものに導くための非営利活動に、経済学のマーケティング手法を適用すること」といった概念であり、1971年から使われている用語だそうである。
彼女が整理した表では、新しい意味での「ソーシャル・マーケティング」、つまり、のちの「ソーシャル・メディア・マーケティング」という用語は、ほぼ次のような感じで定義されている。
○用語の使用開始 ── 2005年ごろ
○定義 ── ブログ、SNS、wikiの類、ポッドキャスト、メディア共有サイトなど、人々が情報を相互共有するオンラインのツールやプラットフォームを舞台として行うマーケティングのこと。
○目的 ── ブランドへの肯定的なクチコミや個人投資を引き出すように練り上げたマーケティング努力の中に消費者を取り込むこと。
○主体 ── ピアツーピア(一対一)型または参加型のオンライン要素をマーケティング活動に追加したいと考えている会社や組織。
○受益者 ── マーケティング活動を行う組織。
○対象者 ── コンテンツの作り手や消費者として、すでにソーシャルメディアツールを使いこなしているtech-savvyな(≒ITに明るい)消費者。
○関連する分野/用語 ── SMO(Social media optimization)、SNM(social network marketing)、クチコミ・マーケティング、バーチャル/バズ・マーケティング、市民(citizen)マーケティング
ウェブマーケティングの前線にいる人々からすると、いくぶん控えめ(あるいはシニカル)に感じそうな部分もあるものの、それも一般の人々の素直な感覚と思えば興味深い。
2005年当時のSMOとは?
前述のNedra Weinreich氏の定義によると、「ソーシャル・マーケティング」という言葉は2005年ごろに使われ始めたという。このことは、T.L.Pakii Pierce氏のブログ「How To Blog For Fun & Profit!」の当時のエントリからも確認できる。2005年1月18日のエントリのタイトルは、「Social Marketing Optimization」(ソーシャルマーケティング最適化)である。
この記事で述べられているのは、当時「オープンソース・メディア」として売り出し中だったブログとRSSを使い、ソーシャル ネットワークやコミュニティを舞台として行うマーケティングのことである。このような流れの中で、ウェブマーケティング業界の一部ではSMOという言葉も使われていたようだ。
そして2006年末の今、あらためて読んでみると、次に示すようないくつかのキーワードの入れ替わりこそあれ、2006年のSMM/SMO((ソーシャルメディアマーケティング/ソーシャルメディア最適化)とほぼ同じ考え方であることがわかる。
○2005年 vs 2006年
○「ソーシャルマーケティング最適化」 vs 「ソーシャルメディア最適化」
○「オープンソース・メディア」 vs 「ソーシャル・メディア」
○「ブログとRSSの活用」 vs 「ソーシャルメディア(ブログ、SNS、コンテンツ共有サイトなど)の活用/への露出の助長」
興味のある方は、松永英明氏のブログサイト「絵文録ことのは」の2005年03月18日の記事「これからのオンラインビジネスのキーワードは、ブログとRSSを使ったSMO(社会的マーケティング最適化)」のご一読をお勧めする。Pierce氏の2005年1月18日の記事の全文の翻訳も掲載されている。
2006年のSMOのルール
さて、2006年8月の数週間であっという間に集積されたSMOのための16個のルールだが、当然すべての議論は英語で行われた(前掲のルール提案の一覧とURLを参照)。幸いなことに、住太陽氏が9月11日のブログエントリで全文を翻訳してくれている。
内容は住太陽氏のブログで確認していただくとして、見出しだけを紹介させてもらおう。
1.リンクのしやすさを向上させよう
2.タギングやブックマーキングしやすくしよう
3.被リンクに報酬を与えよう
4.コンテンツの伝達を促進しよう
5.マッシュアップを奨励しよう
6.自分のためにならなくても、他人の情報源になろう
7.役に立つ貴重なユーザーに報酬を与えよう
8.やりとりに参加しよう
9.観客が誰なのかを知ろう
10.受けるコンテンツを作ろう
11.正直でいよう
12.立場を忘れず、謙虚でいよう
13.新しいことを試そう。新鮮なままでいよう
14.SMO戦略を開発しよう
15.SMO戦術選びは賢くやろう
16.SMOをプロセスと習慣の一部にしよう
最初の五つのルールがすぐにも実践できる具体的な内容に絞られていたのに対し、いくぶん抽象的な項目も増えているような感じもあるが、それだけ奥が深く、また繊細な側面を含むアプローチであるということであろう。また、SMOの対象が生身の人間の集まりであるソーシャルメディアであることを考えれば、スローガン的あるいは道徳的な項目が増えてくるのも当然なのかもしれない。
SMM/SMOの負の側面の認識の重要性
SMOの16のルールのうちスローガン的・道徳的に見える項目については、SMM/SMO的なアプローチを悪用したケースを考えたときに生々しく浮かびあがってくる。ここで個別の事例を挙げることはしないが、SMMにおけるヤラセ問題は、ある意味、単純な検索スパムよりもタチが悪く、根の深い問題だ。
たとえば、「Graywolf's SEO Blog」では、2006年8月30日の「The Dark Side of Social Media Optimization」という記事でSMOの負の側面について議論している。日本のブログでも『Web屋の本』(2006年6月。技術評論社)の共著者の中野宗氏が、9月9日のエントリでこの話題を取り上げているので、興味のある方は「アークウェブ ビジネスブログ」を参照していただきたい。
また、Rohit Bhargava氏も、10月18日のエントリ「The Dark Side of Social Media And 5 Ways to Avoid It」でこの話題を取り上げ、ソーシャルメディアを利用する際の5つの注意事項をまとめている(以下は著者がタイトルのみを意訳したもの)。
1.できるだけ透明性を保つ。
2.自分がマーケティングを行っていることを〝認める〟ことを恐れない。
3.誰が不利益を被るのか理解し、彼らから憎まれて当然と心積もる。
4.自分の側に立って闘ってくれるサポーターがいることを確認する。
5.耳を傾け、参加し、返答する。
SMM/SMOのやってはいけないルール
8月31日のRohit Bhargava氏の“終結宣言"以降も、SMOに関する議論は活発に続けられている。たとえば、Eric Ward氏のブログ「LinkMoses」の12月14日の「Social Media Optimization Nots - 3 Rules」というエントリでは、SMM/SMOにおいてやってはいけない3つのルールが提示された(以下は本稿筆者による翻訳)。
ただし、念のため補足しておくと、Ward氏がこの記事でSMOと呼んで取り上げている行為(ソーシャルニュースランキングサイトへの投票)そのものは、SMO手法というよりはむしろ、もっと広い意味でのSMM的な行為である。「そのような行為がしやすくなるように自分のサイトを改善する(たとえばディグ投票用のボタンを設置する)」ことこそが、本体的な意味でのSMO的な行為である。
○ルール#1 ── Digg、Del.icio.us、Technoratiといった場所でフェイク・アカウント(ネット上の操り人形アカウント)をつくってはならない。これに手を染めると、リンク、ディグ、タグなどを乱造して人為的に自分のページを上位に押し上げることができてしまう。もちろん、フェイク・アカウントは電子メールが登場した日以来存在し続けているものであり、複数の電子メールアカウントやブログを持っているのは普通のことである。だからこそ、不正直に振舞ってはいけない。もし、自分や顧客のサイトに偽りの満足をもたらす目的のためにだけに何個ものアカウントをもっているのであれば、やめるべきだ。
○ルール#2 ── エゴ・ディグについて自制心を失ってはならない。数人の友人に対して自分の最新の記事やブログ投稿へのディグを頼む程度なら、かまわないと思う。しかし、何百人もの「親しい友人」に対してディグを持ちかけているのだとすれば、自分を偽るのはやめたほうがいい。それは、無記名式の投票箱への不正投票と同じことであるし、あなた自身もわかっているはずだ。
○ルール#3 ── タグの誤用に注意する。ニキビ跡の治療を専門とする皮膚科医があなたの顧客だとしよう。彼の専門分野に関する投稿や記事にタグを付けるときには、少しばかりの配慮が必要だ。Technoratiでは「Acne(ニキビ)」のタグを持つ投稿は3万7千件以上もあるが、「Acne scars」(ニキビ跡)のタグを持つのは356件しかない。ビンゴ! しかも、そのわずか356件の中にもタグ・スパムにしか見えないものがたくさんある。
なお、このルール群の主要テーマになっているユーザー参加型のニュースランキングサイトにおける情報操作に関しては、CNET Japanの2006年12月14日の「ランキングをめぐるもう1つの戦い ─ 急成長したdiggを狙う情報操作」という記事がわかりやすい
「SEOからSEO+SMO(ソーシャルメディア向け最適化)へ」(山中 歩)
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