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SEM/SEOとロングテール、そしてLPO

 前に「ごく簡単にいうと、SEOとは、特定のキーワードやキーワードの組み合わせの検索結果の上位に自社のページがランクインして表示されるように、各種の措置を講じることである」と書いたが、それはSEMの初期の段階でのことだ。

 その後、検索結果連動型広告、コンテンツ連動型広告などの登場により、現在のSEMはもっと複雑な様相を呈しており、SEOも初期の段階とは異なる枠組みの中で行われるようになっている。そうした発展の流れを理解する上で欠かせないキーワードがロングテールである。

ロングテール
 SEMやSEOに関連したウェブ2・0的な現象の特徴の一つを端的に表すものとして定着しているのが「ロングテール」という概念だ(※)。日本では、梅田望夫氏が『Web進化論』(2006年2月。筑摩書房)で取り上げたこともあり、その後、一般の新聞などでも広く知られるようになった。

※注:米Wired誌の編集長クリス・アンダーソン氏がIssue 12.10(2004年10月号)の記事で提唱。現在では、同氏が論を自ら拡張した単行本『The Long Tail: Why the Future of Business Is Selling Less of More 』(2006年7月。Hyperion)も刊行されており、邦訳でも読めるようになっている。『ロングテール』(2006年9月。早川書房)。

 オフネット(つまり現実世界)では、さまざまな分野や局面で共通して観察される「パレートの法則」または「80対20の法則」という傾向がある。たとえば実店舗を構える商売では、20%の売れ筋商品による売り上げが全体の売り上げの80%を占めるといった傾向だ(ただし、20や80という数字は厳密なものではない)。

 この法則を積極適用すると、店舗の規模や在庫管理の現実性なども考慮しながら、「だから、20%の売れ筋商品を最優先すべきであり、極端な話、残りの80%は切り捨ててもかまわない」という一つの戦略も導き出される。徹底したPOS管理によって日常的に更新され続けるコンビニエンス・ストアの品揃えは、こうした戦略の究極の成功例と言える。

 それに対しオンネットでは、この「80対20の《売り上げの》法則」の逆が成り立つ場合もあることが明らかになっており、それをロングテール現象と呼んでいる(縦軸を数量、横軸を商品としてグラフ化したときに、大量のニッチな商品が右側に低く長く延び続ける部分を恐竜の尻尾に見立てた命名)。たとえば、アマゾンやiTunes Store(アップルの音楽・映像販売サービス)では、売れ筋でない大部分の商品の売り上げの合計が、少数の売れ筋商品の売り上げの合計を上回るという。

 そして、「このようなロングテール現象の出現を促している主要因は、ウェブを取り巻くインフラと技術の成熟である」というのがウェブ2・0的な見方の主流であり、またロングテールはウェブ2・0的な現象の一つにも数えられている(※)。

※注 ── もちろん、アマゾンの場合はそれに加えて、「現物商品」の徹底した流通・在庫・出荷に関する管理ノウハウの蓄積もある。そういう意味ではデジタルデータだけのiTunes Storeよりも次元の高いことをやっていると言え、『グーグル・アマゾン化する社会』(森健。2006年9月。光文社)という括り方は単にオンライン世界だけのことを言っているわけではないことがわかる。

 もう少しマーケティング論風に表現するなら、「ITの徹底活用による自動化、それによる在庫・出荷管理コスト削減、ニッチな需要をつかみとるための仕組みの構築という条件をすべて満たすようなケースでは、ロングテール現象による成功も不可能ではない」ということのようだ。
 『Web進化論』と同時期に刊行された菅谷義博氏の『80対20の法則を覆す ロングテールの法則』(2006年2月。東洋経済新報社)では、マーケティング手法の土台としてのロングテール戦略を詳しく解説している(※注)。

※注 ── 同書には日本企業の事例紹介もあり、マーケティング業界人以外にもわかりやすい解説内容となっているので、興味のある方はご一読をお勧めする(2007年1月末には、続編も刊行された)。

 また、「ロングテール戦略」は必ずしもネットビジネスだけに適用されるものではない。誤解されやすいが、【必要なのはマーケティングの「ネット化」ではなく、マーケティングの「自動化」である。】例えばリアル店舗の世界でも、業務の自動化を行うことで販売機会を増やし、結果としてロングテール効果を得ることは可能だ。(中略)
 逆に言えば、単に販売の場をネットにしたところで、マーケティングが自動化されていないなら、ロングテール戦略は成立しないということである。
(太字は原書ママ){作業注:太字は【】部分}

 もうお気づきのように、思考の枠組みを一つシフトして考えれば、グーグルの検索エンジン革命とその広告収入ビジネスそのものが、巨大な広告代理業務におけるロングテール現象の体現でもあることが分かる(広告出稿の多くは中小以下の規模の企業であるという)。つまり、グーグル自体がSEM的アプローチの成功者であり、SEOによってグーグルを賢く活用する者がその成功を拡大再生産していくという構図がある。この時点で、ウェブマーケティングのホットな領域はマス的な部分から、リーズナブルな費用で誰もが参加できるニッチな部分へとシフトしたのである。

 このあたりの経緯(検索エンジン革命とSEMビジネスが成立するに至る小史)については、すでに優れた著作がいくつかあり、ここで詳細をなぞることはしない。今回初めて興味を覚えた方で、技術論やマーケティング論に特化しないレベルの解説が欲しい方には、佐々木俊尚氏の名著、『グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する』(2006年4月、文春新書)のご一読もお勧めする。印象的な事例も交えながら、社会現象としての検索エンジン革命の流れとその影響、展望が語られている。

LPO(ランディング・ページ・オプティマイゼーション)
 2005年の時点で、SEMを補足・強化するものとしてLPO(ランディング・ページ・オプティマイゼーション)という考え方も生まれていた(※)。LPOは、検索結果のリンクや検索結果連動型広告をクリックした先にユーザーが着地するページ(=ランディング・ページ)をブラッシュアップすることで、SEO/SEMの費用対効果を向上させることを目指すアプローチである。

※注: たとえばjapan.internet.comの2005年8月25日付けの記事「『LPO』
を知っていますか?」
を参照。

 デジタルオーディオプレーヤ製品を検索する際に、メーカー名とブランド名だけで検索する潜在顧客と、WMA対応、FMラジオ、ダイレクト録音、SDカードといった具体的な機能名も添えて検索する潜在顧客がいるとすると、両者の欲しい情報には明らかな違いがある。

 前者は、お気に入りのメーカーの気になるブランドの製品一覧ページをまずは見てみたいだろうし、もしかすると、詳細な仕様情報よりもアクセサリー感覚のおしゃれなイメージを膨らませてくれるパンフレット風のページを求めているかもしれない。

 一方、後者はすでにこのメーカーの製品を経験しているが、特定の機能に不満があり、その不満を解消してくれる新製品を求めている可能性が高い。おそらく彼に必要なのは、詳細な仕様の一覧表や、特定の機能についての新旧製品の比較がわかるような情報であろう。もしジャンプ先のページを起点に数分閲覧してみても目的の情報が見つからなければ、そのメーカー名にはさっさと見切りをつけてしまう可能性さえあるかもしれない。

 このような潜在顧客を取りこぼさないためには、検索キーワード(の組み合わせ)ごとに最適なランディングページを設定することを検討すべきである。さらに、必要であれば特設ページを設けたり、1つのページを複数に分割整理したり、あるいは、ページ内の特定の場所にアンカーリンクを設定したりといった工夫も必要になってくるかもしれない。

 このような観点から、サイト構造、ページデザイン、ページコンテンツの設計までを含め、SEOをより総合的なSEM手法へと高めようとするのがLPOである。2006年の時点で、LPOは多くのウェブマーケティング支援企業のサービスメニューの1つのとして定着している(※)。

※注 ─ SEM手法はますますトータルソリューションとしての方向性に進みつつあり、ROI(Return On Investment。投下資本利益率/投資対効果)といった経済学プロパーの用語・概念も取り込まれるようなっている。SEMの文脈でのROIは、アクセス解析などのデータに基づきSEM活動の投資効率をきちんと分析することを表す。

「SEOからSEO+SMO(ソーシャルメディア向け最適化)へ」(山中 歩)

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