ブログ普及がSEM/SEOに突きつけた課題
SEM/SEOはブログの普及によって大きな影響を受けたといわれている。ブログは、ユーザによる発信と交流をウェブ2・0的な次元へと引き上げたとい う意味で、本稿のテーマであるソーシャル・メディアの先駆け的な存在でもある。ブログの普及とSEMやSEOの関わりを整理することで、重要なポイントが 見えてくる。
米国では2001年9月11日の同時多発テロをきっかけに、ブログはマスメディア以外のニュースソース形態として注目を浴び、その後、「ブログ論壇」などとも形容される自由な議論の場として爆発的に普及していった。
日本で一般のインターネットユーザーの間に爆発的に普及したのは、1~2年のタイムラグを経た2004~2005年といえる(※)。この時期の象徴的な日付と書籍タイトルをいくつか挙げてみる。
※注:日本におけるブログ以前の「ブログ的なもの」と、ブログ普及直前までの動きについては、『ウェブログ超入門!』(2004年6月、日本実業出版社)の著者でもある松永英明氏のWebページ「日本のウェブログの歴史(詳細版)」が詳しい。
○2004年6月30日 ── 芸能人ブログの代名詞「眞鍋かをりのココだけの話」開始。
○2004年10月 ── 『できる』シリーズの最初のブログ本『できるブログ』(田口和裕/できるシリーズ編集部。インプレス)が刊行。
○2004年12月 ── スポーツ選手ブログの代名詞「古田敦也公式ブログ」開始。
○2004年11月 ── 『ブログで始める超速起業入門』(中野瑛彦/藤井 孝一。明日香出版社)
○2005年1月 ── 『時代はブログる』(須田伸。アメーバブックス)
○2005年1月 ── 『ブログ・ビジネス─ビジネスで活かせるブログの始めかた』(元木一朗。ラトルズ)
○2005年2月 ── 『ビジネス・ブログ・ブック』(小川浩/上田一吉/四家正紀。ラトルズ)
以降、2005年はブログとビジネスを主題とした書籍の刊行ラッシュが続いたのは記憶に新しい。ちなみに、2007年冒頭の時点で、アマゾンの和書で「ブログ ビジネス」というニつのキーワードで検索してヒットする書籍は全22冊。そのうち6冊が2006年の刊行で、15冊は2005年刊行、1冊が2004年の刊行となっている。
また、非インターネットユーザーも含めた国民的な認知度を測れる事例としては、漫才界の年末恒例“格闘”イベント「オートバックスM1グランプリ2006」(2006年12月24日開催)で優勝したチュートリアルのネタがある。彼ら独特のシチュエーション・コント風の掛け合いの中で、ポジティブ系大袈裟勘違い男が相手の話を面白がっていることを示すフレーズの1つとして「この話、ブログに書いてもエエか?」と尋ねる一節があった。彼らは2005年の決勝戦にも出場していたが、同様のタタミカケの部分で使ったフレーズは「ホームページを持っているなら教えて」という意味のものだった。
検索エンジンとの高い親和性
発信者にとってのブログの最大の特徴は、簡単な入力操作で作成したエントリ(記事)を時系列順で、しかもほぼ全自動的に表示・管理できる手軽さにある。一方、ブログを情報源として見た場合、それ以前の自由なHTML形式のページやサイトとは異なり、本来的に検索エンジンと親和性が高いと言われている(技術的な話としては、情報を構造化するのに適しているXML系の仕様や標準を活用した結果として、これが実現されている)。
○各エントリには固定リンク(パーマリング)が自動的に設定される。
→ブログを閉鎖したり、エントリを明示的に削除しない限り、検索結果にリストされたリンクが切れることはない。
○トラックバック機能によって、他のブログとの相互リンクが非常に簡単に行える。
→グーグル以降の検索エンジンがデータベースを構築する際に重要視していると言われる「ページ間の相互リンク」の発生を促進する。
○エントリが追加/更新されるたびに、RSSなどの標準形式による概要情報がフィードとして自動的に生成される。
→フィードを受け取るように設定しておけば、リアルアイムで更新を追跡できる。
○各エントリにコンテンツ分類のためのキーワードやタグを設定でき、分類処理と表示は自動的に行われる。
→「自分のための分類」がそのまま「みんなのための分類」として最大活用される。
このように、ブログではユーザーがブログのシンプルな規則にしたがってコンテンツを追加するだけで、検索エンジンのデータベース構築機能に適した構造・構成で情報が整理されていく。つまり、検索エンジン側としては、従来のWebサイトよりも効率的に質の高いデータベースを構築できる可能性があるということになる。また、1つのテーマについて比較的短めの文章で綴ることの多いブログでは、ページの内容に応じて表示されるコンテンツ連動型広告の成果が高まるというメリットも期待できる。
その一方で、このような親和性はかつての「検索エンジンスパム」の悪夢の再現につながりかねない面も備えている。実際、相互リンク数を稼ぐためだけに、あちこちのブログに機械的にトラックバックを設定してまわる行為や、自動的にそれを行うロボットも出現しているようだ。もちろん、グーグルを始めとする検索エンジン側では、ビジネスモデルの根幹に関わる問題だけに、エンジンのアルゴリズムを改変することで対処済みだろうし、今後も変革は続けられるだろう(※※)。
※注 ── 「検索サービス」という観点からは、ウェブ2・0時代により適合した「ブログ検索」「フィード検索」、「タグ検索」といった特化型のサービスが提供され始めている。
※注 ── 2006年11月には、グーグル、ヤフー、マイクロソフトが、検索エンジンのデータベースの元データとなるウェブインデックス作成機能で提携したというニュースも流れた。グーグルが0・90バージョンを提供している「Google Sitemaps」というプロトコルを採用し、共同で正式フォーマットを提案し、他の検索エンジンにも採用を働きかけていくという。
CGM(Consumer Generated Media)からソーシャルメディアへ
しかしそれとは別に、ブログの普及はもう少し大きな観点で、SEOやSEMに問題を提起した。それは、ブログによって消費者側から発信される情報は、マーケティングの主体である企業側からコントロールできないという点である。
さらに、ブログの話題性と普及に一役買ったアフィリエイトという新しい広告手法によって、発信する消費者自らがアマゾンなどのオンラインショップから直接収入を得ることもできるようになった。アフィリエイトはブログやウェブの発信者とオンラインショップとの間の直接的なプロセスであり、検索エンジンの介在を必要としない。
本稿でソーシャルメディアと総称しているサービス群の多くは、この言葉が広く認知される以前から、ウェブマーケティング業界では、「消費者が生みだすメディア」という意味合いの「CGM(Consumer Generated Media)」という言葉で注目されていたという経緯がある。ブログ以外には次のようなサービスがこれに含まれる。
○クチコミサイト ── 「価格コム」のような消費者の生の声の交換場所。
○Q&Aコミュニティ ── 「はてな」や「教えて!goo」のような情報交換場所。
○SNS ── ミクシィやグリーなど。
○ソーシャルブックマークサイト ── 米国の「デリシャス」や日本の「はてなブックマーク」など。
○コンテンツ中心型コミュニティサイト ── 写真共有の「フリッカー」、ビデオ共有の「ユーチューブ」、音楽共有が目玉の「マイスペース」など。
また、メディアという大きな捉え方をしないまでも、「一般ユーザーが自由に生み出すコンテンツ」という意味合いの「UGC(User Generated Contents)」という言葉も使われていた。
そして、2005年から2006年は、CGM・UGC的なものがウェブ2・0的な技術基盤とトレンドに乗って質量ともに爆発的な成長を遂げ、より広い意味で「ソーシャルメディア」と呼ばれるようになった(※)。そして今後は、ウェブマーケティング業界を超えた社会全体では、「ソーシャルメディア」という言葉がより定着してくだろうというのが本稿の見方である。
※注 ── たとえば、2006年3月28日のCNET Japanの記事「『ソーシャルメディアこそが次世代のインターネット』--ヤフー創業者が来日」を参照
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