マイスペースがフレンドスターに勝った理由
マイスペースがサービスを開始した2003年9月当初、すでに米国では一般ユーザーに向けた最初のSNSとして、招待制の「フレンドスター(friendster)」(http://www.friendster.com/)がスタートしていた。
当時のフレンドスターは順調にユーザー数を伸ばし、100万人を超えていた。その後しばらくの間、米国でSNSといえばフレンドスターのことを示すといっても過言でない状況が続いた。ちょうどその頃にグーグルがフレンドスターの買収に動いたものの結局は実現しなかったという報道もある。
フレンドスターは、友達の輪の拡大、特に男女間の出会いを期待して登録するユーザーが多かったため、わたしも「米国流出会い系サイト」という切り口でフレンドスターの記事を書いた覚えがある。
当時の米国の“出会い系”サイトとしては、500万人弱のユニークユーザーをかかえる「ヤフー・パーソナル(Yahoo! Personals)」が最大手だったが、フレンドスターのユーザーは平均滞在時間がヤフー・パーソナルの倍以上(2時間弱)ということで業界の注目を集めていた。
わたしはフレンドスターのようなコミュニティービジネスは先手必勝だと考えていた。一般的にも、コミュニケーションの手段というものは電話と同じで、ユーザー数が増えれば増えるほど、そのサービスの利便性が増すといわれている。これは「メカトーフの法則」あるいは「ネットワークの外部性」と呼ばれる効果で、ユーザーが増えれば利便性が増し、利便性が増すとさらに新規ユーザーが増えるという好循環に入る。好循環に入ったサービスはユーザー数が勝手に拡大するわけで、後発サービスがその牙城を崩すことはよほどのことがない限り不可能だと考えていた。
ところがマイスペースはあっと言う間にフレンドスターを抜き去ったのである。これはわたしにとってちょっとした驚きだった。なぜマイスペースはフレンドスターからユーザーの奪取に成功したのだろうか。
1つ考えられるのは、フレンドスターは出会い系サイトとしての利用が主流だったので、いったん恋人が見つかったユーザーはまったく利用しなくなるということだ。恋人が見つかった人は会員登録を残したままでありながら、フレンドスターにアクセスしなくなる。フレンドスターはコミュニケーションの道具として機能しなくなるわけだ。
その点、マイスペースは音楽好きの交流の場であったため、ユーザーが突如使用しなくなるということはまずなかった。ほとんどの若者は音楽に興味があるし、音楽好きが突如音楽嫌いになることはほとんどありえないからだ。
音楽コミュニティーとして始まったマイスペースは十代や二十代前半の若者向けの人気が高い。米国の十代の若者の8割から9割がマイスペースに登録しているといわれる。テレビ、新聞などの従来型メディアの中に、ここまで1つの年齢層にしっかりと入り込んでいるメディアがあるだろうか。もちろん、2005年以降のユーザー数の爆発的な増加に伴い、三十代、四十代のユーザーの割合も増えてきているようだ。(湯川鶴章)
この原稿は出版に向けた未完成原稿です。引用する際は、ご注意ください。
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