機能をテーマにしたソーシャルメディア
人脈作りを目的としてスタートしたSNSが、進化の過程で様々な機能を追加していった一方で、もともとウェブ上で提供されていたアプリケーションサービス(機能)が、ユーザー同士で共有可能になってソーシャルメディア化していったケースも見られる。
具体的にはオンラインアルバム、オンラインブックマーク、地図、カレンダー、ブックマークなどが、ソーシャルメディアとして進化している。写真共有のフリッカーや動画共有のユーチューブなどは、単にツールを共有して利便性を増すという次元を超えて、個人が自らのクリエイティビティを発揮して自由に表現し、他者と交流をはかるための場所になる、とわたしは考えている。
とりわけ、ユーチューブに代表される動画共有サイトは、メディアの世代交代に際して、より重要な意味を持つものになるだろうと考える。動画共有サイトについては次の章であらためて述べることとして、ここではアプリケーションから生まれたソーシャルメディアについて、いくつかの例を具体的に観察していこうと思う。
タグを付ければ写真も検索できる(ソーシャルフォト)
カナダのルディコープ社が2004年2月に開設した写真共有サービス「フリッカー(Flickr)」は、これまでの個人用ツールとしてのオンラインアルバムとは異なり、アップロードした写真を自由に公開できるようにし、検索可能にしている。テキストを基調とした文書ファイルと異なり写真ファイルは開けてみないと内容がわからないが、フリッカーでは、ファイルにタグを付けて自由に分類できるようにしている。
タグとは、ファイルの中身を識別するための「荷札」で、たとえば著者に関わりのある写真に“湯川鶴章”“Yukawa”“時事通信”“記者”などのタグを設定しておくと、ユーザーはフリッカー上の膨大な数のファイルから、同じタグのついた写真だけを検索することができる。
人気のあるタグを設定すれば多くのユーザーの目に留まる可能性も高くなるが、無関係なタグを付ける行為が推奨されざるものであることは言うまでもない。このように、コンテンツの分類(taxonomy)がユーザー(folks=民衆)自身の手に委ねられることを称してフォークソノミーといって、ウェブ2・0の主要な概念の一つに数えられるが、フリッカーはまさに、ユーザーによって提供された情報をユーザーが分類することで価値を高めているのだ。
タグが付くことにより、何をどこでだれが撮影した写真であるかがわかるので、写真を探す際にさまざまなキーワードで見たい写真にアクセスできる。写真をアップロードした人だけでなく、閲覧したユーザーが自由に新たなタグを付けることもできるので、タグをたどることで思わぬ発見(セレンディピティ)を得られることもある。
人気のあるタグは一覧になっていて、文字の大小で視覚的に人気順がわかる。この「タグクラウド」と呼ばれる表示方法を最初に採用したのもフリッカーであるという。
タグと並んで、フリッカーの大きな特徴といえるのは写真の感想などコメントを書き込むことができたり、仲間同士でグループを形成したりと、SNS的なコミュニティを作り出す機能を持つことだろう。万人向け、あるいは友達だけ、個人用と、写真の公開範囲をコントロールすることも可能だ。類似サービスとしては顔認識技術が秀逸な「Riya」や「ZORG」、日本発の「フォト蔵」などがある。
なお、ルディコープ社は2005年3月に、ヤフーにより買収された。
▼「フリッカー」(http://www.flickr.com/)
▼「Riya」(http://www.riya.com/)
▼「フォト蔵」(http://photozou.jp/)
▼「ZORG」(http://www.zorg.com/)
自分と興味が似た他の人が見ているサイトがわかる(ソーシャルブックマーク)
2003年に誕生し、ソーシャルブックマークの先駆けとなった「デリシャス(del.icio.us)」では、よくチェックするお気に入りサイトのURLをウェブ上に保存し、どこからでもアクセスできるようにするためのサービスだ。これが単に個人用ツールとしてだけでなく、公開してほかのユーザーと共有することができるようにしたおかげで、重要な意義を持つことになったのである。
デリシャスには、気になるニュースやブログの記事やユーチューブなどで見ておもしろかった動画がブックマークされることが多い。すなわち、同じ記事に付いているブックマークの数は、その記事への関心度のバロメーターになるのである。また、自分がブックマークした記事と同じものをブックマークしている人のIDをたどることによって、自分と同じ記事に関心を持った人が他にどんな記事を参照しているのかがわかる。また、ブックマークの一つ一つにタグを付けることができる。デリシャスは2005年12月、ヤフーにより買収された。
日本のソーシャルブックマークでは「はてなブックマーク」や「フロッグ」「1470.net」「ルータス」などが有名だ。海外には、「ファール(Furl)」のようにウェブページのコピーまで保存してくれるサービスもある。
▼「デリシャス」(http://del.icio.us/)
▼「Furl」(http://www.furl.net/)
▼「1470.net」(http://1470.net/)
▼「フロッグ」(http://www.flog.jp/)
▼「ルータス」(http://www.rootace.com/)
▼「はてなブックマーク」(http://b.hatena.ne.jp/)
重大ニュースは「みんなの意見」で決める(ソーシャルニュース)
2004年にサービスを開始した「digg(ディッグ)」は、元テレビ記者のケビン・ローズ氏が立ち上げたソーシャルニュースサイトとも言えるサービス。「digg」とは「dig(掘り出す)」を元にした造語だ。digには俗語で「好き」という意味がある。つまり、ソーシャルニュースの目的は「みんなが好きなニュース」を集めることにある。
ニュースのソースはウェブ上の各種ニュースサイトやプレスリリース、ブログなどから持ち寄られる。ここまではソーシャルブックマークと同じだ。ユーザーは(リンク先の)記事を読み、内容が気に入れば「digg」ボタンを押し、気に入らなければ「bury (埋める)」ボタンを押すだけ。投票数で上意15個位以内に入ったニュースは目立つ場所に表示される。これまでの常識では、ニュースの選別・価値判断はメディアの重要な役割の一つとされていた。それがディッグでは、ニュースバリューは読者の投票によって決まるというわけだ。このため、新聞ではベタ記事扱いにしかならないような記事がトップを飾ることもある。現在は動画やポッドキャストに対するランキングも実施している。
ソーシャルニュースは、米国のギーク(ハイテクオタク)たちの間で1997年頃から人気があった「スラッシュドット(Slashdot)」や、ワーアード・デジタルに買収された「レディット(reddit)」などにルーツを求めることができる。
ソーシャルニュースサイトは個々の記事の人気を測るリアルなバロメーターであり、トップページで紹介された記事は、リンク先のサーバーがパンク状態になることもあるというほど、影響力は絶大だ。このためdiggへの投票に対して金銭を支払という不正行為も問題になっている。また、ユーザーは記事に対するコメントを書き込むこともでき、このコメント自体に対しても投票ができるようになっている。
日本国内向けでは最大規模のソーシャルニュースサイトが、マイネットジャパンの運営する「ニューシング(newsing)」である。ニュースの好き嫌いを ○×で投票し、コメントを書き込むことができるのが特徴だ。といっても、単純に○×の多寡でランキングが決まるのではなく、記事の新しさや話題性といった基準に基づいてポイントを計算しているという。個人のブログにニューシングの最新ランキングを表示させるためのブログパーツも無料配布している。
▼digg(http://digg.com/)
▼Slashdot(http://slashdot.org/)
▼reddit(http://reddit.com/)
▼newsing(http://newsing.jp/)
(湯川鶴章)
この原稿は出版に向けた未完成原稿です。引用する際は、ご注意ください。
トラックバック
TrackBack URL for this entry:http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/164435/14140990
この記事へのトラックバック一覧です:機能をテーマにしたソーシャルメディア











コメント