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セレナソフトウェア、オンラインマーケットMashup Exchangeを開設

というタイトルの発表文が送られてきた。

2008年4月29日、カリフォルニア州レッドウッドシティ発 - 米国セレナ
ソフトウェア(Serena Software, Inc. 本社:米国カリフォルニア州レッ
ドウッドシティ、日本支社:東京都品川区、以下セレナソフトウェ

ア)は
本日、Business Mashupの作成と利用を加速させるオンラインマーケット、
Serena(R) Mashup Exchange(TM)(http://serena.com/mashupexchange
を開設したことを発表しました。ビジネスユーザーや社内IT部門、さら
にはコンサルティング・パートナー、チャンネル・パートナーは、パッ
ケージ化されたマッシュアップ、Webサービス、プロフェッショナル・
サービスを検索、購入、販売可能となります。セレナソフトウェアは検
索、購入、販売に関して使用料、手数料等を一切請求しません。

非常に興味深い発表文。というのは、こうしたソフトウェアの連携こそ、今一番力を入れて情報を収集している分野だから。でも、このセレナなる会社の仕組みがどの程度のものなのか、果たして広く受け入れられるものなのかはよく分からない。だってsalesforce.comのappexchangeと同じようなものに思えるし、salesforce.comのほうはかなり普及してきているからだ。先日のエントリーで紹介したsalesforce.comジョージ・フー氏のインタビューから抜粋。

salesforce.comでは、appexchangeというサードパーティ開発のプログラムの売買市場を2006年から運営している。サードパー ティーのソフト開発会社は、salesforce.com上で動くソフトを開発すれば、appexchangeで販売できる。セキュリティやリライアビリ ティといった基本機能はsalesforce.comのものを利用できるわけだから、CRMに追加するアプリの開発に集中できるわけだ。既に750ほどの アプリが売りに出ている。そのうち日本語に対応しているものは、30から40ほどある。具体的には、リードマネジメント(見込み客管理)や、キャンペーン 管理など、マーケティング関連のものが100以上ある。
 一方ユーザー側は、appexchangeの中から好きなアプリを選び購入することで、CRMの機能拡充が簡単にできる。可能性は無限だ。

同じくsalesforce.comのジム・スチール氏は次のように語っている

-salesforce.comは、5年後にはどんな企業になっていると思いますか。

 プラットホーム事業が伸びていると思います。われわれが構築したインフラをいろいろな企業に使ってもらうわけです。マーケティングや、金融サービ ス、ERP、アカウンティング、サプライチェーンなどです。また自社のシステムと取引先のシステムを連携させるようなシステムのインフラにもなるでしょ う。
 企業が自社開発するためのリソースがない重要度の低いシステムも、われわれのインフラ上で素早く低コストで共同開発できるかもしれません。可能性のあるシステムとしては、休暇計画システムや、注文管理、経費管理、人材募集などでしょう。
 顧客企業のシステム構築を見ていると、1つのパターンがあるようです。まず最初はセールス自動化から入り、将来予測、機会管理、顧客インタラクションなどの機能を搭載し、コールセンターなどの顧客サポートにも乗り出します。
 その後はマーケティングや、キャンペーン管理に乗り出します。そして、取引先やユーザーのコミュニティーやエコシステムの管理も始めます。そしてその後は、CRMとまったく無縁のシステムの開発にまで乗り出しています。
 これは非常にエキサイティングなことです。われわれは既にインフラを作ったわけですから、それを利用してもらいたいわけです。われわれがすべてのアプリケーションで優れた製品を開発できるわけではありませんから。
 このプラットホーム事業は、今のところまだまだ小さいビジネスですが、5年後には本業であるCRM事業と匹敵するぐらい大きなビジネスになっているのではないか、と思います。

と、かなりこの分野には期待している様子。一方で、セレナのほうも以下のようなサービスを手がけている。これってもろバッティングするのでは。どうなんでしょう。

Customer Relationship Management  Mashups to coordinate CRM activities
Human Capital Management  Mashups for Human Resources and other HCM needs
Help Desk Solutions  Mashups for Help Desks, Service and Support Centers
Application Lifecycle Management 
Mashups for IT and Applications Development

よく分かりません。

オンデマンドで儲からないのは当たり前-ボツにした未完成原稿vol.7

主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。


▼競争の形は個人戦からテクノロジーを使った団体戦に

 表現物の価値を計る物差しが、「芸術性」「質」というものに加え、「共有」「つながり」というものが台頭してきているが、表現物を取り扱うビジネス間の競争のルールにも変化が生じている。
  過去を振り返っても競争のルールは大きく変化した。国家化の局面の中で、最初は武芸の達人同士の争いだった。そうであるなら、個人の技量が決め手になる。 それがやがて軍隊同士の衝突になった。軍隊同士であれば、鉄砲、戦車などの武器が勝負を決める。個人の技という人間の力ではなく、武器というテクノロジー を利用した組織の力が重要になる。

 工業化社会の局面でも、同様だった。1人1人が手作業で靴を作り上げるのではなく、テクノロジーを使った大量生産で低価格の靴を作った企業が勝った。ここでも個人戦ではなく、テクノロジーを使った団体戦に、競争のルールが繁華している。
  表現物の競争の形もまた変化しようとしている。人間の力が勝負を決める個々の表現物の間の競争ではなく、テクノロジーの力が勝負を決める無数の表現物の集 合の勝負である。国家化の時代も工業化の時代もそうであったように、情報化の時代にも、新しいテクノロジーを使った新しい形の団体戦が重要になるのであ る。
 もっといえば、大きく成長するのは、テクノロジーを使った団体戦に向いた組織であり、個人の力に頼った個人戦に向いた組織が活躍できる場は、縮小傾向にあるのだ。

▼ロングテール時代でもビジネスに変化なし

  最近のテクノロジー系の流行の言葉に「ロングテール」というのがある。書籍という表現物を使ってこの言葉の意味を簡単に説明してみよう。一番よく売れてい る本から順に並べたグラフを作ったとする。X軸に過去1カ月に売れた本を最もよく売れた本から順番に並べる。Y軸は販売部数とする。
 インターネット普及以前ならX軸に並ぶ本の数はそう多くなかった。書店の店頭に並べられる本の数には限りがある。売れなくなった本は店頭から次々と姿を消し、一度店頭から姿を消した本が再び売れ始めることはほとんどなかった。
 ところがインターネット上の書店なら、在庫がなくならない限り、売れない本でも販売され続ける。ユーザー一人一人の購買履歴から、そのユーザーが好きな本を推薦する仕組みなどもあって、古い本でもわずかながら売れ続けることが多い。
 過去1カ月に売れた本を並べたグラフでみると、X軸が長く伸びる。まるで長い尻尾のように。ゆえにネットの普及後にみられるようになったこうした現象がロングテールと呼ばれるようになった。
 あまり人気がなく細々と売れている商品のことをロングテールと呼ぶこともある。一方で売れ筋のヒット商品をヘッドと呼び、ヘッドとロングテールの中間に位置する商品をミドル、もしくはマジックミドルと呼ぶことがある。
  さてロングテールの時代になり、一見ビジネスが変化したように思われがちだが、作家や出版社のビジネスには何の変化もない。これまで同様に、目指すはヒッ ト商品である。ヒットしなかった商品でもネットのおかげでわずかに売れ続けるようにはなったが。売り上げとしては微々たるものである。ロングテール効果な どほとんど無意味であり、ヒット作を出すことがこれまで同様に最も重要なのである。作品を作るという人間の力を使ったビジネスでは、相変わらず競争は個々 の表現物間で行われるのだ。これまでと、ビジネスにそう変化はないわけだ。
 一方で変化があったのは、テクノロジーの力が勝負を決める集合の競争部分である。
 ネット上の書店アマゾン・ドットコムは、1つ1つの利益は小さいものの、非常に多くのロングテール商品を無数に集めることで全体として大きな収益を上げることに成功した。

▼オンデマンドで儲からないのは当たり前

 同様にオンデマンド放送は儲からないと嘆くテレビ局関係者や製作プロダクション関係者がいるが、儲からないというのもまた当たり前の話である。
  データ転送の形に「プッシュ」と「プル」があるといわれるが、通常の放送というものは「プッシュ」である。視聴者は、受け身でも番組を見ることができる。 中には、それほど強くその番組を見たいと思っていない視聴者もいるのだろうが、その視聴者にも取りあえずその番組は届く。
 一方、オンデマンド放送は「プル」である。視聴者がその番組を見たいと明確に意思決定しない限り、その番組は視聴者に届くのである。
 視聴者がどれだけ真剣にその番組を見たかどうかは別にして、番組が届くという意味の視聴率では「プッシュ」型の放送のほうが数字は上だろう。
 オンデマンド放送にはロングテール効果があり、昔の映画などもある程度の資料率は稼げるのだろうが、やはりその効果はそれほど大きくなく、「プッシュ」と「プル」の差を埋めることは、到底期待できない。
 そこで「オンデマンド放送は儲からない」という嘆きになるわけである。
 しかし「番組」という人間が作った表現物、人間の力が勝負を決める個々の表現物の間の競争というのであれば、昔と競争のルールが何も変わっていないのは当たり前。オンデマンド放送にしたからといって、個々の製作プロダクションが急に儲かるようにはならない。
  ではだれが儲かるのか、といえば、新しい競争の分野での勝者である。インターネット普及により、競争のルールが変化しつつあることは先に述べた。人間の力 が勝負を決める個々の表現物の間の競争から、テクノロジーの力が勝負を決める無数の表現物の集合の競争が、新たな競争の分野となった。
Photo  そして今、テクノロジーで勝負を決める集合の競争は始まったばかりだ。USENグループの動画配信サービスGyaoの人気が高まったかと思えば、米国の動 画共有サービスYouTubeが急速に普及した。ネット調査会社ネットレイティングスは2007年3月22日に、「YouTube、“史上最速”で利用者 1000万人に到達」という発表文を出している。これで動画サイトの分野でYouTubeの王座が確定したのかと思えば、日本の動画共有サービス「ニコニ コ動画」が彗星のごとく登場した。ネットレイティングスの2007年9月21日の発表文によると「ニコニコ動画」、8月の総利用時間は前月比52%増加と ある。前年比ではなく前月比で、である。2007年12月19日の「テレビ局サイトの総利用時間が3カ月連続のマイナス」という発表文では、 YouTube、ニコニコ動画の総利用時間の推移もグラフに入っているが、このグラフをみても、ニコニコ動画がもの凄い勢いで普及、利用されていることが 分かる。
 こうした動画サイトの運営で最も重要なのが、無料で動画を蓄積、配信できるようにどれだけ低コストでシステムを構築するのか、ということになる。テクノロジーの力が勝負を決める新しい形の団体戦の競争はまだまだ激化しそうだ。


序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5
アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6

「グーグルとはDNAが同じ」-salesforce.com②

Photo  グーグルとの提携強化で、米国のプレスでは大きな話題を集めたsalesforce.com。ちょうどsalesforce.comのpresident & Chief Customer Officerのジム・スチール氏が来日したので、お話をうかがうことにした。

-急成長を続けてますよね。

 わたしは以前IBMにいたのですが、2002年にsalesforce.comに移籍してきたときは顧客数3千から4千社、売上高は2500万ドル程度の会社だったんですが、今は顧客数4万1000社、売上高10億ドルの会社に成長しました。

-グーグルと提携強化しましたよね。salesforce.comとグーグルの各種サービスの連携が強化されましたが、これはどういう意味があるのですか?

 創業者のマーク・ベニオフが9年前にsalesforce.comを立ち上げたとき、グーグルの理念ややり方を大いに参考にしました。グーグルが消費者向け領域で急成長する中で、ベニオフは法人向けサービスの領域でリーディングカンパニーになることを目指したわけです。
 ですので、グーグルとはDNAが同じというか、非常に企業文化が似ているわけです。
 フォーブス誌が急成長するテクノロジー企業25社という特集を組んでいましたが、1位はグーグルでsalesforce.comが2位でした。
 salesforce.comはビジネスアプリを、グーグルは生産性向上アプリを提供していますので、非常にいいコンビネーションだと思います。

-でもグーグルは法人向けにも入ってこようとしてますよね。

 われわれは最初、高価なCRMシステムを導入できない中小の規模の企業向けのサービスとみなされてきました。しかしわれわれが機能を強化する中で大企業もわれわれのサービスを使うようになってきたのです。
 マイクロソフト、オラクル、SAPがどれだけ資金力があったとしても、世界中のすべてのイノベーションを手中におさめることは無理なんです。
 グーグルとsalesforce.comは、イノベーションを1社で抱え込めないことを理解しています。抱え込むのではなく、その時々で、もっとも優れたテクノロジーと連携するほうが重要であることを分かっているのです。

-どうして1社で抱え込めないのでしょう。

 われわれが何か新しい技術を実装したら、マイクロソフトなどの既存大手は「われわれも同様の技術を1年から2年以内に実装します」と言うのですが、時代の変化は速くわれわれの顧客は「そんなに長く待てない」と言っています。
 それに最近の企業は、ソフトウエアのアップグレードには慎重です。
 ソフトウエアのアップグレードは大変なんです。
 アップグレードを成功させるには、3つのことをしなければなりません。まずテクノロジー自体をアップグレードさせること、新しいシステムを使えるように人を訓練すること、新しいシステムに合うようにビジネスプロセスを変更することです。
 従来の買取型ソフトだと、テクノロジー自体のアップグレードにリソースを割かねばならず、残りの二つにリソースをなかなか割けない。
 その点SaaSだと、テクノロジー自体のアップグレードはわれわれが責任を持って行います。顧客企業は、あとの2つに集中できるわけです。

-どういう技術分野に力を入れていますか。

 顧客企業が何を求めているのか調査したところ、次の6つのことを求めていることが分かりました。
 1つは、セキュリティです。そこで何百万ドルというコストをかけてsalesforce.comのプラットホームのセキュリティを強化しました。1つ1つの顧客向けにセキュリティを強化するのではなく、プラットホーム全体のセキュリティを向上させるため、われわれのユーザーはわれわれが施す最新、最高のセキュリティ対策の恩恵を受けることができるわけです。
 2つ目はスケーラビリティーです。salesforce.comのプラットホームは最初から規模の拡大が簡単にできるように設計されています。われわれのデータセンターの責任者は、ebayのデータセンターを運営していた人間です。スケーラビリティのことを知り尽くしているわけです。たとえ明日、利用者が急増しても対応できるようになっています。
 3つ目はパフォーマンスです。1つのサーバーで運営されているシステムだとリスポンスタイムにムラがでますが、われわれのシステムはグーグルのシステムのようにデータセットを小さく分断し、並列に処理できるようにしています。ですので、常に最高のレスポンスタイムを実現できるわけです。
 4つ目は、リライアビリティです。顧客ごとに4万1000のデータセンターを稼動させ、それぞれのリライアビリティに注力するのではなく、すべての顧客企業を1つのバーチャルなデータセンターにまとめることによって、そのデータセンターのリライアビリティに全力を傾けています。実際には、災害などの万が一の事態を考えて2つのデータセンターを運用していますが。
 5つ目はインテグレーションです。顧客企業が自由自在にシステムを連携できるようにオープンAPIやオープンシステムを採用しています。
 6つ目はカスタマイゼーションです。顧客の業態がなんであれ、95%の業務はsalesforce.comのプラットホームをカスタマイズすることで対応できるように、ありとあらゆる業務プロセスを実装しています。顧客企業は残りの5%を実装するだけで、自分の会社の業態にぴったりと合ったシステムを構築できるのです。

-日本企業は自前のシステムを維持したがるという話を聞いたことがありますが、salesforce.comの日本支社の業績はどうですか。

 急成長を続けています。規模的には、米国、英国の次、3番目ですが、急速に売り上げを伸ばしています。日本郵政グループ、三菱 UFJ信託銀行、みずほ情報総研、損害保険ジャパンなど、大手顧客を獲得しています。

-ASPとSaaSの違いは

 ASPは、シングルテナント、SaaSはマルチテナント、ということです。
 ASPは、1つのソフトウエアを1社の顧客のために1個所のサーバー、データセンターで運用していた。顧客企業のソフトウエア維持、運用の代行サービスでしかなかった。だから多くのASPは失敗したんです。
 一方でSaaSは、複数の顧客のシステムを1つにまとめて運用することで、システムの効率化、強化が可能になります。1社ごとにシステムでは実現できないようなセキュリティやリライアビリティ、パフォーマンスが可能になるわけです。

ークラウドコンピューティングの分野ではsalesforce.com以外にどういう企業が業績を伸ばしてきていますか。

 skypeや、テレビ会議のwebEx、人事アプリケーションのworkday、マーケティングシステムのxactlyなどが有望ですね。

-salesforce.comは、5年後にはどんな企業になっていると思いますか。

 プラットホーム事業が伸びていると思います。われわれが構築したインフラをいろいろな企業に使ってもらうわけです。マーケティングや、金融サービス、ERP、アカウンティング、サプライチェーンなどです。また自社のシステムと取引先のシステムを連携させるようなシステムのインフラにもなるでしょう。
 企業が自社開発するためのリソースがない重要度の低いシステムも、われわれのインフラ上で素早く低コストで共同開発できるかもしれません。可能性のあるシステムとしては、休暇計画システムや、注文管理、経費管理、人材募集などでしょう。
 顧客企業のシステム構築を見ていると、1つのパターンがあるようです。まず最初はセールス自動化から入り、将来予測、機会管理、顧客インタラクションなどの機能を搭載し、コールセンターなどの顧客サポートにも乗り出します。
 その後はマーケティングや、キャンペーン管理に乗り出します。そして、取引先やユーザーのコミュニティーやエコシステムの管理も始めます。そしてその後は、CRMとまったく無縁のシステムの開発にまで乗り出しています。
 これは非常にエキサイティングなことです。われわれは既にインフラを作ったわけですから、それを利用してもらいたいわけです。われわれがすべてのアプリケーションで優れた製品を開発できるわけではありませんから。
 このプラットホーム事業は、今のところまだまだ小さいビジネスですが、5年後には本業であるCRM事業と匹敵するぐらい大きなビジネスになっているのではないか、と思います。

-話を聞いているとグーグル以上に大きな会社になりそうな勢いですが(笑)。

 われわれはビジネスソリューションのリーディング企業のトップ5社に入りたいと思っています。今のところトップ5社には、マイクロソフト、グーグル、オラクル、SAPなどが入ると思います。salesforce.comはトップ企業と比べれば小さいですが、成長率が高いので、いずれトップ企業の仲間入りできるのではないかと思っています。

-5年後には、トップ5社とはどんな企業になっていると予測されますか。

 salesforce.comとグーグル。あとは、どうなるんでしょうね(笑)。

多くのすばらしい出会いに感謝

「期間限定で講演します」と宣言してから一カ月。依頼を受けた全10回の講演がすべて終了した。あーしんど。
いただいた名刺は約300枚。聞きにきてくださった人はのべ500人以上。
10回のうち、公開が4回。社内セミナーが6回。海外(韓国)が一回、地方(福井)が一回だった。
韓国ネット大手の社内セミナーはもちろん印象的だったが、某大手キャリアの若手がポケットマネーを出し合って勉強会を特別に開催してくれたのは、ありがたかった。若い人たちの明日への熱い思いに触れるのは、いつも楽しい。
ネット業界にこれほど詳しい人たちが福井にいるのは驚きだった。最高に新鮮なあまえびで、ネット業界の話題で盛り上がるのは本当に楽しかった。
シード・プランニングの野下さんは、東京での講演に出れなかったということで、福井の講演にわざわざ参加してくれた。結局、行きの新幹線はご一緒し、野下さんが最近まとめられたモバイル広告の調査報告書のことについてガンガン議論した。さすがに詳しく、いろいろ勉強になった。
「広告はテクノロジーになる」という僕の主張に、広告関係者からはブーイングをいただくことが多かったが、反対にECサイト運営者からは「あったり前の話」と指摘された。
数年前に「ネットは新聞を殺すのか」という本を出して新聞業界から総スカンをくったが、今回は「広告はテクノロジーになる」と言って、広告業界から白い目でみられるようになるとは。トホホホ。
それにもまして、この一月でたくさんのいい出会いに恵まれた。10年ぶりに再会した韓国在住の学生時代の親友スティーブを始め、元朝鮮日報記者のLimさん、エイクエントの宮崎さん、某キャリア社のTさん、某ネット広告会社のOくん、T社のKさん、D社のTさん、A社のTさん、N社の美人社長のKさん、FのSさんほか、講演会に出席してくださったみなさん、本当にありがとうございました。楽しい一カ月でした。

アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6

主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。


▼アマチュア作品はプロに勝てるのか

 しかしこうしたアマの表現物がプロの表現物に勝つことが できるのだろうか。今日、プロのカメラマン、ライター、ミュージシャンにこの問いを投げかければ、ほとんどのプロは「アマに負けるわけはない」と答える。 もちろん「勝てそうもないです」と気弱なことを言っているようではプロ失格なので、こうした答えでもちろん構わない。ただ本当に今後もそうした時代が続く のだろうか。

 多摩大学の公文俊平教授は、今日のプロによるアマチュア軽視と同様の傾向は過去の時代の境目にも存在したと指 摘する。中世から近代への移行期に農民を集めた兵隊が作られたが、こうした兵隊は、日本では武士、ヨーロッパでは貴族に当初は「百姓を集めた兵隊に負ける わけがない」とばかにされていた。しかし銃を装備した近代軍隊の戦いの中では、個々人の剣術の腕前はまったく意味がなかった。戦いのルールが、個人戦から 銃を使った新しい形の団体戦に変わったのである。
 産業化の局面では、靴や洋服といった製品を手作りするギルドの親方が大量生産の靴や洋服を「女子供が作った物に負けるはずがない」とばかにした。ところが現在、われわれの身の周りは大量生産の製品であふれている。手作りの製品を探すほうが困難だ。
 今はまだ情報化社会に入ったばかり。これからより優れた表現のツールが次々と登場してくるだろう。そうしたツールの支援を得て、アマの作品はプロの作品に対し、量で凌駕し、質で肉薄するようになるのだろう。
  ただ古い物差し、古い競争のルールで見る限り、プロはプロである。頂点に君臨し続ける。一人対一人の戦いというルールであれば、やはり武術を極めた者の勝 利である。今日でも、空手のトーナメントでまったくの素人が勝ち残れる可能性はゼロに近い。同様に靴という製品の分野でも、価格という物差しを除外し、芸 術性や品質という物差しだけで計れば、今日でもプロの靴職人の製品に軍配が上がる。

▼表現物の物差しは「質」から「共有」へ

  表現物でも芸術性という物差しで計れば、今後もプロのクリエーターの勝利になるだろう。作家の浅田次郎さんは、ネット掲示板「2ちゃんねる」から生まれた 小説「電車男」があまりに話題になったため、実際に読んでみたという。「作品としては非常にレベルの低いものだった」と語っている。
  ケータイ小説も、文章表現が稚拙であり、内容が陳腐である、という批判をよく耳にする。確かに文章は日常的な口語体で修飾語が少ない。1行1行の間にむだ なスペースが多いようにも見える。内容も、援助交際や10代の妊娠といった少し過激な要素をちりばめながらも、どこにでもあるような単なる切ない恋の物語 である。
 なぜ文学的にそれほど優れていると思えない作品が、これほど女子中高生に人気なのだろうか。
 ケータイ小説に関し、ITジャーナリストの佐々木俊尚さんはネットメディアCNETの「ソーシャルメディアとしてのケータイ小説」と題したコラムの中で次のように語っている。
  「本来、文学というのは、ひとりの孤高の作家がみずからの内面と向き合い、みずから作り上げた世界観と哲学を世間に問うという行為だった。だがケータイ小 説は、書き手の側も、読み手の側も、自分たちがひとつの『空間』を共有していると信じ、その『空間』に寄り添うかたちで小説をコラボレーションによって完 成させていく。文学が卓越した個人による営為であるのに対し、ケータイ小説は人々の集合知をメディア化したものである。
 そのようなとらえ方をすれば、ケータイ小説の文体が陳腐で下手くそで、同じようなステレオタイプ的なプロットに彩られているのも当然である。なぜなら陳腐でステレオタイプなものこそが、若い読者にとっては『リアル』であるからだ」。
 小説をコラボレーションする、とあるのは、作者がケータイ小説を書き進めながら出来た文章を次々とケータイサイト上で発表していく中で、読者からコメントが寄せられ、そのコメントを考慮して小説が変化していくというプロセスをケータイ小説が取るからである。
 佐々木さんの言うように、これまでの文学とケータイ小説はまったく違うものなのかもしれない。小説は個人が作りだす芸術であり、ケータイ小説は作者と読者、読者同士をつなぐ仲介物、メディアなのかもしれない。
  「ケータイ小説がウケる理由」の著者の吉田悟美一さんは、ケータイ小説は言ってしまえば「小説」ではないと言う。モバイルから生み出された全く新しいコン テンツであるというのだ。また吉田さんは、さらに言えば「読書」でもない、と主張する。ケータイ小説は、モバイル・インターネットがもたらす「独特のコ ミュニケーション文化」である、というのだ。
 女子中高生にとって、ケータイメールこそが生活の中核を占めるコミュニケー ションツールである。このコミュニケーションツールを使って恋愛などの悩みの相談をするというコミュニケーションスタイルがベースにあり、そのベースの上 で発展してきたのがケータイ小説という新しいコミュニケーション文化であるというのだ。
 「ケータイ小説がウケる理由」の中 で著者の吉田悟美一さんは、「Deep Love」というタイトルのケータイ小説を事例として紹介している。渋谷センター街で援助交際を続ける17歳の女子高生が主人公の物語だ。ケータイのサイ トで毎週、1話(約1600文字)ずつ配信していたのが、女子高生の間の口コミで人気を集め、作者によれば、感想メールが毎日数百通は寄せらたという。そ してその寄せられるメールの中にあった「実体験」の話などを基にストーリーを展開していった部分が多いという。
 読者にして みれば、自分が送ったメールが物語りに組み込まれるわけである。作者と一緒になって小説を作り上げたという共有感がある。読者にとっても「自分の作品」で あるわけだ。ケータイ小説の書籍化は、読者が出版社に要望するケースが多い、という。「自分の作品」と感じるからこそだろう。そして、ケータイ上で既に読 んでいるにもかかわらず、一緒に作り上げた記念品として書籍化された作品を本屋で購入する読者が多いのだという。
 こうして 見てみると、ケータイ小説は身の周りで起こった楽しいこと、困ったこと、おもしろいこと、うれしいこと、悲しいことを、友人とおしゃべりするのと、同じよ うな感覚を読者に与えてくれるのだろう。芸術というよりも、おしゃべりと同様に「人とのつながり」の1つの形なのだろう。小説に関しても新しい物差しが登 場しているわけだ。芸術性という物差しではなく、おしゃべりのような意識の共有を持てるかという物差しだ。
 どうやら動画と いうメディアでも同様のようだ。コミュニケーション・デザイナーとして活躍する河野武さんは、マーケティング施策の中に積極的に動画を活用する一人だが、 河野さんのブログ「smashmedia」の「ぼくは動画人ではない」という記事の中で「ぼくは『動画』ってくくりがどうもしっくりきてなくて、ぼくの やってるのは『ライブ』であって、極論、動画じゃくて音声だけのラジオでもかまわないとすら思ってるし、キモはチャット(というかリアルタイムな参加)に あるとも思ってるので『動画』じゃないよなあ」と語っている。
 もちろん動画を一方通行の情報伝達手段として活用するケース はまだまだ多いのだが、「参加」「共有」という側面に注目した使い方をする人も増えてきているようだ。YouTubeやニコニコ動画に投稿される動画は、 共有を前提にしているものがほとんどだ。特にニコニコ動画は、動画上にテロップを自由に書き加えることができる。これはまさに動画をベースにした新しいコ ミュニケーションの形なのである。プロの作る作品を超えるものを作りたいと思って多くの人がコメントを書くのではない。動画を囲んでみんなでワイワイ楽し みたいだけなのだ。
 天才靴職人の手作りの靴へのニーズが完全になくなっていないように、芸術性の高い小説や映画へのニーズはなくならないだろう。しかし一方で、現実味がある「空間」を共有できる形のケータイ小説やみんなでワイワイ楽しめる動画へのニーズが強まっているのだ。
 小説や動画だけではない。あらゆる表現物に、人と人をつなぐ「空間」を作れるか、特定の感覚を共有できるか、という新しい物差しが登場しつつあるのかもしれない。
 アマチュアが作った新しい表現物を、芸術性、質といった物差しで評価しても仕方がない。「共有」「つながり」という新しい物差しで評価すべきなのである。


序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5

ブログの書籍化、普通にアリ

 「ネット上で情報を流すと紙に印刷した情報が売れなくなる」ー。2000年ぐらいから、従来型メディア企業の人のほとんどがこう考えていた。ネット上でがんがん情報を出したり、原稿を本にまとめる前にブログで公開するような人間は頭がおかしいとさえ言われた(それって、オレじゃん。汗)
 でも最近、「おもてなしの経営学」や「パラダイス鎖国」を読んで、ブログを本にするビジネスモデルって、十分成立するんだってことが証明されたと思う。
 僕自身、中島聡さんや海部美知さんのブログにアクセスしたことは当然ある。有名ブログだから。

 でもすべてのエントリーを読んできたというわけではない。読むべきものが多過ぎて、いくらすばらしい書き手のブログでも毎日チェックできるものではない。そんな僕のような「熱狂的ファンではないけれど、何本かのすばらしいエントリーに共感したことがある」というレベルの読み手にとって、出版社が新書にまとめてくれるのは、非常にありがたい。そのブロガーの主張のエッセンスをコンパクトにまとめてくれているからだ。その代金としての700円は、決して高くない。だってそのエッセンスを得るためにブログのエントリーを全部読むわけにはいかないもの。
 「おもてなしの経営学」のアマゾンの書評には、「ブログをまとめただけのもの」という低い評価のものもあったが、熱狂的ファンにはそうでも、僕のような普通の読み手にとっては十分に価値のある本だと思う。(そう思うならアマゾンでそう書評を書いてやれよ>自分。はい、そうします>自分。大阪名物、一人ボケ、一人突っ込みでした)
 「本を出したいんですけど」という相談を受けることがあるが、アドバイスは「ブログを書け」。それにつきます。
 「ブログ書いているんですが、出版社からオファーがこないんですけど」。内容(妄想系とか)、姿勢(攻撃的過ぎるとか)の問題かもしれませんね。それに対しては「ブログをお楽しみください」ということ以外、特にアドバイスはありません。出版することがすべてではないですから。

ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5

主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。


  さて話をもとに戻そう。IBMのレポートが指摘する広告業界を激変させる2つ目の現在進行形の変化の領域は、クリエイティビティである。アマチュアやセミ プロの表現欲求が高まっていることと、ブログやデジタルカメラなど、その表現欲求を満たすためのツールが充実してきたことで、アマチュアやセミプロのクリ エイティビティが爆発しているというのだ。IBMのレポートによると、こうした人々のクリエイティビティの爆発は、2つのやり方でメディアと広告に多大な 影響を与え始めている。1つは、自らが何か表現物を作り出すことで、もう一つは他人が作った表現物を評価、流通することで、だ。
 わたしも確かにそう感じている。

第2章 「共有」「テクノロジーを使った団体戦」という新ルール

▼ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力

  拙著「爆発するソーシャルメディア」(ソフトバンク新書)の中でも詳しく述べたが、ここにきて人々のクリエイティビティが爆発しているのだ。もちろんクリ エイティビティの定義にもよるのだが、クリエイティビティという言葉が大げさであるというのなら、表現欲求ではどうだろう。先進国を中心に少なくとも表現 欲求が開花しているのは事実だろう。そしてもちろん日本人も例外ではない。
 日本でブログサービスが登場した際に、「日本人 は受身だから、自ら表現することはない。ブログは普及しない」と一部でいわれたものだ。ところが、ブログ検索大手の米テクノラティの調べによると、もっと もブログを書いている国民は日本人であることが分かった。2006年の第4四半期には、日本語で書かれたブログの全体に占める割合が37%になり、英語で 書かれたブログの 36%を抜いたという。
http://www.sifry.com/alerts/archives/000493.html
  それでも「日本のブログは単なる日記が多い。欧米のように重要な情報はほとんど載っていない」という意見を耳にすることが多かった。しかしアルファブロ ガーアワードの仕掛け人の一人、アジャイル・メディア・ネットワークの徳力基彦さんは、2007年のアルファブロガー・アワードを振り返って「日本にも、 ためになる情報を発信するブロガーが増えてきた」と感想を述べている。
 投稿ビデオサイトYouTubeが日本人ユーザーの 間で大ブレークしたときも、「欧米のユーザーは自分で撮影したビデオをアップしている。ところが日本のユーザーがアップするビデオはテレビ番組の違法コ ピーが中心。欧米人と比べて日本人にはクリエイティビティが少ない」という意見があった。
 ところが投稿ビデオにテロップを 自由に書き込める「ニコニコ動画」が登場すると、若者を中心に多くのユーザーがこの表現媒体に飛びついた。「ニコニコ動画」はあっと言う間に若者の間で力 を持つメディアになった。そしてそこに音声合成ソフト「初音ミク」が発売された。このソフトを使って作った歌が簡単な動画とともに次々と「ニコニコ動画」 にアップされるようになった。人気の初音ミク動画の中には、再生回数が★ 万回★を超えるものもある。
 ニコニコ動画は海外にもファンが増えてきている。「ニコニコ動画」内で人気になった歌を、台湾の大学生が合唱しており、その模様を映した動画が「ニコニコ動画」にアップされている。
 日本で作られた「ニコニコ動画」という表現ツールを使ったクリエイティビティの爆発が、海を超えて台湾に伝播したのである。
 日本人もやはりクリエイティブなのだ。表現するのが好きな国民なのだ。
  ではなぜ、今ここにきてクリエイティビティが爆発しているのだろう。情報社会学の権威、多摩大学の公文俊平教授は、「衣食住が足りたからだ」と説明する。 少なくとも先進国では飢餓を心配しなくていい状態になっている。これは人類の長い歴史の中で、実は非常に最近の出来事なのである。途上国では、食料問題は まだまだ深刻である。
 食料の心配がなくなった人には、表現欲求が芽生える。人と同じ服を着たくない、というのも自己表現の1つの形である。今、社会の多様化が進んでいるのは、実は衣食住という人間の基本欲求が満たされた人が増えているからである。
 そこに登場したのが、インターネットであり、ブログであり、動画である。何人かは最初こうした新しい表現ツールにとまどうものの、いずれ恐る恐ると試してみる。そして表現する喜び、評価される喜び、共有する喜びに目覚め、さらに高度な表現に挑戦していくのである。

▼とまらない作品の無料化、低価格化

  表現物を作り出すという点では、先に述べた通り、日本でもテキスト情報は主にブログで、映像情報はYouTubeや「ニコニコ動画」などを使って、オリジ ナルな表現物が日々大量に生成されている。これはプロが作った表現物の価格を著しく低下させるか、無料化させる結果になる。
  こういう話をすると、知り合いのカメラマンが「プロの作品とアマの作品では質がまったく違う」と激怒したことがある。しばらくそのカメラマンを会ってな かったのだが、最近ばったり会ったら、仕事が減ってきたと嘆いていた。「アマの写真でも結構いいのがあって、しかも無料で使ってもいいと宣言してたりする んです。もう勝てないです」と言うのだ。彼はアマチュア向けのカメラ教室で教えることを考え始めたという。表現物の低価格化の結果、表現物そのものでは生 計を立てられず、その周辺に生計の道を模索し始めたわけだ。
 写真ほど急激な変化ではないが、文章を生業とする者にも原稿料 の低額化という形での影響が出ているようだ。あるライターのブログのコメント欄の罵詈雑言のコメントが寄せられ「炎上」したというので、アクセスしてみ た。どうやらネットメディアの原稿料の低さをブログ上で批判した際の書き方が、ブログ読者の反感を買い炎上してしまったようだ。反感を買うような書き方は 別にして、ブログで愚痴を書きたいほど原稿料の相場が低下しているのだろう。
 別のフリージャーナリストの友人も、「紙の媒体には将来がないので、収入を得る別の方法を考えなければならない」と語っていた。彼のような売れっ子にも原稿料の低額化の波が押し寄せているのかと少し驚いた。
 作家の井上ひさしさんとお会いしたときに「本が売れなくなった。10年前と比べると部数のケタが1つ下がった」と嘆いておられた。
  その一方で、ケータイの日記サイト上でユーザーが書いた小説がものすごい人気となっている。そのうちの幾つかの小説は、実際に書籍として出版されるように なっている。いわゆるケータイ小説である。そしてなんと、今日の書籍のベストセラーの半分をケータイ小説が占めるようになっている。「ケータイ小説がウケ る理由」(吉田悟美一著)によると、2007年の年間ベストセラーの文芸部門のベスト3をケータイ小説が独占し。ベスト10では5作がランクインしている という。そしてケータイ小説の代表作といわれる「恋空切ナイ恋物語」(美嘉著)は書籍化からわずか1ヶ月で売り上げが100万部を超え、映画化された「恋 空」も大ヒットを続けている。
 プロの作家の本が売れなくなる一方で、ケータイ小説のようなアマチュアの作品が飛ぶように売れているのだ。
  売れっ子ライターでも嘆く時代である。一般のライターへの影響は押して知るべし、だ。ブログを見て回っても、プロのライターが書く原稿とそう変わらない原 稿、いや専門的な内容になるとライターの書くものよりも優れた専門家ブロガーの原稿が、ネット上で無料で読めるようになってきている。これからアマチュア の原稿は、ますます増えていくことだろう。原稿料の低価格化は、当然といえば当然の流れなのかもしれない。
 こうしたアマの表現物の津波は、写真、文章だけでなく、いずれ音楽、映像の分野にも襲いかかってくるだろう。

序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4

国産モバイルアドマーケットプレース「オーパスト」

Op_logo_color_2 モバイル検索連動型広告のフロンティア、サーチテリア株式会社が、モバイルの広告マーケットプレース「オーパスト」を立ち上げた。国内では2つ目になるのかなあ。米国のアドモブが2月にサービスを始めたのは、このブログでも取り上げたとおり
 アドモブはどうしているんだろうか。欧米と同じくロングテールの方から攻めて行くと言っていたけど。あまり普及が進んでいないといううわさを業界関係者から聞いたことがある。どうなんだろう。
 一方でサーチテリアは、日本的に広告代理店とうまくやっていく考えらしい。
 まあモバイルの領域で技術革新がどんどん進んでほしいので、競争があることはいいことだと思う。
 あとオーパストの特徴としては、自動最適化の機能を搭載していること。過去の広告配信の実績から分析したり、パイロットテストしたりするようだ。
 また特定の広告枠を指定して期間指定でオファーできたりもする。ネットを通じて相対交渉するというイメージか。
 広告マーケットプレースに関しては、この記事がよくまとまっている。だれが書いたんだろう。ああ、オレか(笑、告知を頼まれましたので・・・ )。

CMSが大手広告会社の基幹技術に

Publicis Groupe傘下のデジタルサイネージ関連のテクノロジー企業MarketForwardの最高技術責任者Manolo Almagroさんのインタビューの中で、次のように語っていた。

大手広告会社の最大の資産は、コンテンツだと思います。広告会社はコンテンツ・マネジメント・システムの開発に力を入れるべきでしょう。
 それとメタ・データに関する技術です。メタ・データを使えば、いろいろな媒体向けに広告を自動生成できるようになります。広告製作のすべてが自動化されるとは思いませんが、かなりの部分は自動化が可能です。
  広告主を理解し広告主にあった総合的な広告プランを作り出せるのは、優秀な広告マンの仕事であり続けるでしょう。でもその広告マンが考え出したイメージに 基いて、ありとあらゆる媒体、機器向けに広告の形態を微調整する仕事は、やがて自動化されるでしょう。そうした自動化の実現には、メタデータを用いたコン テンツ・マネジメント・システムが必要になります。

それでPublicisがそのCMSを開発したみたい。
Almagroさんが映像のリンクを送ってきてくれた。ご参考まで。

here's some other tools we've built (Marketing Automation Tools) that
may interest you...
http://www.vimeo.com/811964
http://www.vimeo.com/811882
http://www.vimeo.com/811862

CRMを核にしたマーケティング-salesforce.com①

Hu  米国の著名コンサルタント、レジス・マッケンナ氏は、今後ほとんどのマーケティング業務がインターネットを中心にしたインフラによって自動化されると予言する。またそのマーケティングインフラの核になるのが、機能を拡大したCRM(顧客関係管理)システムであるという。CRMの機能拡大はどの程度進んでいるのだろうか。米国取材の途中でサンフランシスコのsalesforce.comの本社に立ち寄り、上級副社長のジョージ・フー氏にお話を聞いた。

▼CRMは大企業だけのものではなくなった

-salesforce.comってどんな会社?

 salesforce.comは、CRMの分野で第4位。最大手ではないのだが、非常に注目されている。それは他社に先駆けてウェブを活用した展開を始めたからだ。
 ソフトウエアは長年、パソコンに最初から搭載されているか、パッケージに入って販売されてきた。パソコンに搭載されている場合であっても、ユーザーはソフトウエアを購入するという形を取り、ソフトウエアを所有してきたわけだ。
 特にCRMのようなソフトは高額だったので、これまでは大企業しか購入できなかった。
ところが、われわれがSaaS(サービス・アズ・ア・ソフトウエア)という形で提供し始めた。購入するのではなく、使用料を支払うという形なので、初期投資が不要。しかも使用料も低く押さえた。これで、中小企業でも導入できるようになった。

-どうして安くできるのか

 マルチテナンシーという考え方だ。テナントごとにビルを構築するのではなく、1つのビルに複数のテナントを入れて運用コストを下げるということ。
 一軒屋を購入するか、マンションを購入するか、の選択だ。ほかの人と共有できるところは共有することで価格が安くなるわけだ。CRMは大企業だけのものではなくなった。すべての規模の企業に開放されたのだ。

-コストが低いというのがSaaSモデルの特徴なのか?

 ほかにもメリットはある。例えば、常に最新のサービスを利用できるということも大きな利点の1つ。またAPIを公開しているので、ほかのシステムとも連携が簡単にできる。
 例えば、グーグルのキーワード広告アドワーズと連携し、資料請求のページまでたどり着けば、そこからはsalesforce.comで管理できる。つまりどのキーワードにつけた広告が、どれくらいの売り上げにつながったかが分かるわけだ。広告が何回クリックされたかという数字ではなく、商品が幾ら売れたか、という究極の広告の効果が分かるのだ。
 またsalesforce.comでは、appexchangeというサードパーティ開発のプログラムの売買市場を2006年から運営している。サードパーティーのソフト開発会社は、salesforce.com上で動くソフトを開発すれば、appexchangeで販売できる。セキュリティやリライアビリティといった基本機能はsalesforce.comのものを利用できるわけだから、CRMに追加するアプリの開発に集中できるわけだ。既に750ほどのアプリが売りに出ている。そのうち日本語に対応しているものは、30から40ほどある。具体的には、リードマネジメント(見込み客管理)や、キャンペーン管理など、マーケティング関連のものが100以上ある。
 一方ユーザー側は、appexchangeの中から好きなアプリを選び購入することで、CRMの機能拡充が簡単にできる。可能性は無限だ。

-例えばどのような可能性があるのだろうか

 例えばカジノのシステムとの連携。カジノで現金をやり取りするのではなく、電子マネーのようなカードを使うことが主流になっている。このカードのシステムには出入金の履歴が記録されるから、だれがどの程度勝っているか、負けているかも分かる。
 このシステムとsalesforce.comを連携させることで、例えば連敗している客に対して、無料ドリンクや無料食事券をサービスすればどうだろう。きっとそのカジノのファンになってくれるはずだ。

-可能性は無限といっても、それはあくまでもBtoBの領域の話ではないのか。BtoCにもCRMを利用することは可能なのか?

 どこのサイトかは言えないが、だれもが知っているある巨大サイトは、そのサイトを利用しているユーザーのアクセス履歴などの情報をsalesforce.comで管理している。

-そんなことをすれば、ものすごい情報量になるのではないか。

 ものすごい情報量だ。

-カジノの話のように、あらゆるシステムとCRMを連携させることでマーケティングが自動化され、より効果的になることは分かった。そうなってくると、広告はだんだん不要にならないだろうか?

 CRMが広告を不要にするとは思わない。われわれsalesforce.comも広告を打つ。CRMを核にした自動化されたマーケティングと、広告の両方のバランスが必要だろう。でもそのバランスは、CRM側に急速に傾いているのも事実だ。

-話をうかがっていると、顧客情報をより多く持っている企業が有利になるような感じがするが。

 確かにこれからの時代は、顧客の情報を持っている企業の勝ちだろう。
 ただ顧客の情報を一手に囲い込み、一人勝ちを狙う、というような考え方をする企業はもういないんじゃないだろうか。web2.0時代を経験して、一人勝ちを狙うより、得意分野に特化し、他社との共存共栄を目指すことが、結局は自社にとって最善策であることをだれもが認識するようになったのだと思う。

テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4

主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。

▼5年以内にテレビと同格に

 IBM のレポートによると米国でも世代によってメディア消費の形は異なるようで、テレビの利用率が高いのは35歳以上で、反対にSNS(mixiのようなコミュ ニティーサイト)やブログ、オンライン音楽配信などのサイトやサービスを利用しているのは、18歳から24歳の層が最も多い。日本と異なるように思えて興 味深いのは、モバイル機器の利用率が最も高いのが25歳から34歳までの層、電子ブックの利用が多いのが45歳から54歳の層、ということだ。
 消費者のアテンションが、テレビなどの従来型メディアから、SNSなどの新しいメディアに移行しているのであれば、広告も新しいメディアに移行しなければならない。
 ただ現在では世界的に見てもオンライン広告の市場は、テレビ広告の 分の1。日本市場ではこの差はさらに大きく、オンライン広告が 。テレビ広告が だ。
 IBM によると、オンライン広告市場は予測を上回るペースで拡大を続けており、いずれ利用時間や影響力に相当する予算がインターネット広告にも費やされることに なるという。少なくとも今後5年以内に、ネット広告の過小評価はかなり改善されることになるとIBMは予測している。オンライン広告がテレビ広告と同格に 扱われるようになるというわけだ。
 日本でも電通傘下のオンライン広告代理店サイバー・コミュニケーションズ(CCI)の長澤秀行社長は同様の考えを持っている。同社長は、何年先という明言を避けたが、日本でもいずれオンライン広告がテレビ広告と同様に扱われるようになることを示唆している。
  とはいうものの、日本の広告業界の商慣習は欧米とは大きく異なるといわれる。欧米と同じ速度で日本の広告業界も変化していくとは考えられない。近未来にお いて日本の広告業界も欧米並みに変化するのだろうか。変化するのだとしたら、どのような領域で、どのような速度で変化するのだろうか。このことに関して は、後で詳しく考察してみたい。

▼確実に広がるテレビCM飛ばし

  アテンションが分散しているという問題以外にも、テレビコマーシャルにとっては、CM飛ばしという問題がある。DVDレコーダーやHDDレコーダーといっ たテレビ番組録画装置で、簡単にテレビCMが飛ばせるという問題だ。米国ではこうした録画機器はデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)という総称で呼ば れるが、IBMのレポートによると、米国では DVRの普及率は25%で、消費者の満足度が高いため5年以内に普及率が40%近くに拡大する見通しだという。
 またDVR 利用者の53%は、テレビ番組の少なくとも50%はDVRに一度録画したものを見ていると答えている。DVRで視聴するテレビ番組のCMは、ボタン1つで 一瞬にして早送りされている、と考えて間違いない。メディア消費の変革期の最初の大きな犠牲者はテレビCMになりそうだ、とIBMレポートは結論づけてい る。
 日本でも同様の予測が、野村総合研究所によって2005年5月に発表されている。それによると、2009年までに HDD搭レコーダーの世帯普及率は44%にまで普及し、「そうなれば、今後さらにテレビCMの価値は損なわれていく恐れもあります」としている。この予測 で野村総研がテレビCMスキップ率からして「2005年の企業の年間テレビ広告費全体における損失総額は約540億円となる可能性がある」としたために、 テレビ業界や大手広告会社が激しく反発した。視聴率は録画した番組の視聴ではなく、実際に放送中に視聴した割合を算出しているので、視聴率に従って決めら れる広告料金が無駄になっていることはない、という反論だ。
 だが実際に広告料金が無駄になっいるかどうかは別にして、DVRが普及が進んでいるのは事実であり、普及に伴ってテレビCMが飛ばされる確率が今後高くなっていくという見通しも間違いではないだろう。
http://www.nri.co.jp/news/2005/050531.html
  それでも「アメリカと違って日本人のライフスタイルはテレビが中心だし、日本人は受身の国民性だからリモコンを積極的に操作してCMを飛ばすことはない」 と反論する人がいる。そういう人は、今は過渡期であり3層の情報消費の形が共存している、という「メディア消費3層並存論」を思い出してほしい。自分や自 分の身の周りの同世代の人たちのライフスタイルは、決して典型的な日本人のライフスタイルではないのだ。過渡期の今、唯一の典型的ライフスタイルなど存在 しないのである。

▼変化の速度を読めず戦略まとまらず

  こうしたメディア消費の形の変化は、広告業界にどのような影響を与えるのだろうか。IBMが世界の広告業界の重役80人に聞き取り調査をしたところ、半数 以上が今後5年以内に30秒CM向け予算の10%以上が別のメディアに移行するだろうと考えており、10%近くの重役が25%以上の予算が別のメディアに 移ると考えていることが分かったという。
 コンテンツを自ら製作していなかったり、コンテンツを配信する権利を持っていない従来型メディア企業にとって、メディア消費の形の変化は収入減という危機を意味する可能性がある、とIBMレポートはまとめている。
  さて世界の広告業界の重役の予測が正しかったとして、10%の収入減は果たして「危機」なのだろうか。こういう話に対しては、「たとえテレビCMの予算が インターネットに流れ始めているとしても、それは金額的には微々たるもの。何も恐れることはない」と反論するテレビ業界関係者や広告マンがいる。その通り なのか。それとも、金額的には微々たるものでも長期的傾向の始まりという「危機」なのだろうか。意見の分かれるところである。
  そしてなによりも、変化の速度に対する意見が、日本のメディア企業関係者や広告会社関係者の間で大きく分かれるようだ。ある電通マンは「テレビ広告市場が 縮小していくという認識は、既に共有されている。今後もテレビ広告が安泰だと気楽に考えている広告マンは一人もいない。意見が分かれるのは、縮小の進行速 度なんです」と語る。縮小の進行がゆっくり進めば、テレビ局や広告会社は時間をかけてオンライン広告を中心とした新しい体制に移行すればいいだけのことで ある。一方で変化が急速であれば、新しい体制に移行できずに大ダメージを受けることになる。
 この変化の大きさと速度に対す る共通認識を持てないことが、従来型メディア企業や広告会社が明確な戦略を打ちたてられない根本的な理由の1つになっている。急速な変化がくると考える人 たちは、リストラを含む劇的な組織改革を求める。変化はそこまでも急速ではないと考える人たちは、できるだけ痛みの少ない方法で乗り切ろうと考えている。


序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
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分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3

「パラダイム鎖国」を読んで

海部美知さんのパラダイス鎖国を遅ればせながら。
このまま鎖国状態でいいのか、という部分は同感。米国は既に情報化社会に入った感じがあるのに、日本はメディアを見る限りまだ工業社会。情報産業で世界に貢献できないままでいいんだろうか。
またこの本を読む前から、自分自身のグローバル化を今年以降のテーマにしようと思い始めていたのだが、この本を読んでますます決意が強くなった。
この本の帯のところに池田さんが「あわてた政府は『日の丸プロジェクト』で対抗しようとしているが、それより本書を読んだほうがいい」と書いてあるけど、その通りだと思う。米国式がなんでもいいとは思わないけど、これからはシリコンバレー的イノベーションが起きるような環境整備が必要なんだと思う。

メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3

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▼メディア消費の過渡期と3層並存論

 前著「次世代広告テクノロジー」の中でも書いたが、わたしは日本社会にはメディア消費の違いから三層が共存しているのではないか、と考えている。
  最初の層は、年齢的には50代以上だろうか。10年前とメディア消費の形がそう変化していない層だ。10年前にも新聞を購読していたし、今も購読してい る。テレビも10年前同様にまあまあ見る。最近は、ネットやケータイも使い方を覚えたが、使い方としてはメールをときどき打つぐらい。自分だけではない。 周りを見てもそうだ。今がメディアの大変革期だとは到底思えない、という層だ。「メディア利用の変化をまったく感じていない層」である。
  2番目の層は、年齢的には20代から50代。10年前との大きな違いは、パソコンが仕事の中心になり、ケータイが生活の中心になったことだ。10年前は、 用事をメールで済ませようとすると「電話をかけてこない失礼やヤツだ」と言われたものだが、今はメールで済む用件なのに電話をすると「忙しい時間に電話を かけてくる失礼なヤツ」と怒られるようになった。顧客との会合の前には、顧客の名前でインターネットを検索し、顧客の最新動向をつかんでから会合に臨むビ ジネスマンが増えてきた。相手がブログを書いているなら、ブログを読んでから会うということがエチケットにさえなりつつある。

 ネットのおかげで新聞はあまり読まなくなった。ネットのニュースサイトや専門家のブログを読むことで、新聞以上に仕事に関する情報を豊富に得られるようになったからだ。
 とはいうものの、新聞はいまだに重要な情報源だし、テレビも見る。10年前と比べると確かに変化はある。しかしそれをメディアの大変革期と呼ぶことは少しオーバーに思える、という層だ。「少しは変化を認識している層」である。
  3番目の層は、年齢的には10代から20代。10年前と比べたくとも、比較できない層だ。メディア消費に変化はあるが、それは時代の変化というより、年齢 的な理由が大きい。今はケータイを持っているが、10年前はまだ小学生だったのでケータイを買ってもらえなかった、ということだ。「変化さえも認識できな い層」である。
 この層の主流メディアは、ケータイであり、ゲームである。新聞はほとんど読まないし、テレビもあまりみない。パソコン利用には個人差があり、学校でしか使ったことがない、という人も多い。
 この3つの層が現在の日本に共存している、というのがわたしの認識である。
Photo  このことを裏付けるような調査結果が、この図である。
  NHK放送文化研究所が行った「国民生活時間調査」の結果によると、過去10年間で30代、40代男性の新聞の接触時間が半減している。一方で70代や20代以下は、それほど変化していない。
 この調査からも分かるように変化を実感できるのは、真ん中の世代だけ。しかもその変化も接触時間が半減した程度。大変革期と呼べるほどの変化ではない。ほかの2つの世代に関しては、ほとんど変化を感じないだろう。
  つまり個人ベースの実感としては、ちょっとした変化、もしくはほとんど変化を感じていない、ということになる。しかし一番上の世代と一番下の世代を比較す れば、非常に大きな違いがある。社会全体としてみれば、やはり大変革期と呼ぶのにふさわしい変化の真っただ中だということになる。
 このようなことを「次世代広告テクノロジー」という本に書いたのだが、面白い反響をいただいた。
 オンライン広告会社オプトでは、この3層の存在について社内で議論をしたそうだ。
 同社の代表取締役、海老根智仁氏が寄稿したネットメディアcnetのコラムによると、議論の結果次のような3層の姿が浮かび上がってきたという。

 「メディア利用の変化をまったく感じていない層」の特徴
・60歳以上が圧倒的に多い。
・マス4媒体の接触が中心であり、パソコン、モバイルの活用はほぼ皆無である。

  「変化を認識している層」の特徴
・25歳~59歳と幅広い層が存在する。
・年代が低くなるほど、PC、携帯電話を中心にマス4媒体に接触を行っている。
・年代が高くなるほど、マス4媒体の接触が中心になるが、インターネットは利用をしている。

  「変化さえも認識できない層」の特徴
・10歳代~24歳が多い。
・マス4媒体を利用していない傾向が強い。加えそれに対し興味が無い。
・半面、パソコン、携帯の活用は他の世代に比べ明らかに多い。
・年代が下がる(10歳代)と、その傾向はより強まる。

  やはり3層は実際に存在すると考えてもよさそうだ。自分の周りに自分と同じ年齢層しかいなければ、自分のメディア消費の形が主流だと勘違いするかもしれな い。もし読者の中に、「テレビ中心のメディア消費の形は10年前と変化していない。米国と日本は違う」と考えておられる方がいれば、それは1つの層の中だ けでの真実であるというように認識していただきたい。今日の日本の社会はメディア消費の過渡期にあり、ほかの2層ではまったく異なるメディア消費の形が主 流であるのだ。
 そして人間というものは、それほど急速に習慣を変化させない。特に年齢の高い層は変化を嫌う。従来型メディアに慣れ親しんだ層のほとんどの人が、ケータイ中心の生活に移行することなど、ありえない。
  単純な話に聞こえるかもしれないが、このことをしっかり認識しておかなければ、メディア、広告の未来は読めない。この認識がなければ「日本はアメリカと違 う。アメリカの先行事例は日本に当てはまらない」という思考停止状態の安易な日本特殊論に陥ってしまう危険性がある。ヤフー、ソフトバンク、電通まどの キープレーヤーの今後の戦略を予測する中で、この3層並存論は重要なコンセプトとなるのだ。


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分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2

分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2

ボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。


 IBMのレポート「The end of advertising as we know it(われわれの知っている形の広告の終焉)」は、現時点で4つの領域で大きな変化が進行中だという。
 その4つの領域とは「アテンション」、「クリエイティビティ」、「測定」、「広告枠」だ。
 そこで、この4つの領域について考察するというIBMレポートの構成に沿う形で、わたしなりのメディア、広告の未来図を形作っていきたいと思う。
▼技術革新が決める究極の未来の方向性

 さて広告の変化を軸に日本の広告、メディア、ネット業 界、産業界は今後どのように変化していくのかというのが、この本のテーマである。IBMのレポートは大変示唆に富むものではあるが、日本の広告業界の商慣 習は今日でも欧米のそれとは大きく異なるといわれることが多い。IBMレポートの予測は、世界の広告業界の未来予測であるとしているのだが、その予測が日 本にも完全に当てはまると断言されると、抵抗を感じる人は多いことだろう。
 ただ日本の広告業界も、長期的には技術革新の大 きな影響を受けることは間違いない。時間差はあるものの産業革命が世界中のすべての先進国に同じような影響を及ぼしたように、情報技術革命も長期的にはす べての先進国に同じような影響を与えるであろう。今押し寄せてきている技術革新の波の大きさを考えた場合、ほとんどの文化的特殊性は、最終的にこの大きな 波に飲み込まれると考えていいからだ。ということは日本の広告業界の究極の未来を予測する上でも、 IBMレポートの技術動向をベースにした議論の進め方は有効なはずである。
 究極の未来に文化の差はないとはいっても、日本 の文化的特殊性がどの程度堅牢なのかはだれにも分からない。1度の津波では崩れないかもしれないし、数回津波が押し寄せれば崩れるかもしれない。ほとんど の場合、究極の未来よりも近未来を予測するほうが、困難なものなのである。
 そこでこのIBMレポートの議論の進め方を借りて、わたしが考えるメディア、広告業界の究極の未来をまず予測してみたい。その上で日本の広告業界の特殊性を考慮し、日本のメディア、広告業界、一般事業法人に関する近未来予測を試みたい。

▼分断される消費者の関心

 アテンションとは、注意、注目のこと。メディア消費のことである。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマス4媒体に加え、 ネット、ケータイを中心にいろいろなメディアが登場している。日本でも、YouTube、ニコニコ動画といった動画サイトは非常に人気だし、mixiなど のコミュニティーを長時間利用する人も多い。あまりに長時間利用が多いので職場でのmixiを禁止している企業もある。またケータイの領域では、ゲームサ イト「モバゲータウン」が中高生の間で大人気だし、ケータイの日記サイトから生まれたケータイ小説は書籍化されベストセラーリストの上位を占めるように なっている。
 こうした新しいメディアが次々と登場しても、人間の1日は24時間のまま。つまり消費者の時間、注意、注目をめぐり、メディア間で取り合いが始まっているわけだ。
 IBMのレポートによると、米国ではテレビは「2番目以降のバックグランドのメディア」になっているという。視聴者の最大の注意、注目を引きつけるのは、インターネットであり、チャット(文字による会話)、ゲームである、としている。
  こういう話をすると、日本人の中高年から必ずといって反論がくる。「それはアメリカの話でしょ。日本とアメリカは違うよ」と。もちろん日本と米国には異な る点が多い。しかし気をつけないといけないのは、今はメディアの変革期で過渡期であるということだ。社会の中に幾つものメディア消費の形が存在し、自分や 自分と同世代のメディア消費の形が社会の一般的な形であると考えていては、大きく誤ることがある。
 わたしがそう考えるよう になったのは、メディアの変革をテーマに数多くの講演をするようになってからだ。毎回同じように「今はメディアの変革期である」という主張をするのだが、 その会場によって聴衆の反応がまったく異なるのだ。「そんなことはない。日本ではテレビ、新聞は今後も主流のメディアであり続ける」という反論が飛び出す 会合があれば、「当たり前で陳腐な話。予測でも何でもない」と反論される会合もある。
 どうやらメディア消費の現状認識には何通りかあり、認識の違いは年齢をベースにしているようなのだ。

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経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0

 結局ボツにした原稿。何かの役に立てばということでアップします。未完成原稿なので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。
 流す順番を間違えました。今回の原稿は、前回の原稿より前にくるものです。

◎序章 米IT大手が広告事業に参入

▼何が何でも広告大手目指すマイクロソフト

  「必要な人、物、金、技術革新を投資し、どんなことがあっても広告業界のキープレーヤーになってみせる」ー。米パソコンソフト最大手マイクロソフトのス ティーブ・バルマー CEO(最高経営責任者)は2007年の でこう言ってのけた。広告のキープレーヤー?・・・。IT大手のマイクロソフトが、である。
 2007年のマイクロソフトの企業買収の数々を見てもマイクロソフトが広告分野に本気で参入しようとしていることが分かる。夏には、広告マーケットプレースの有力ベンチャーであるadECN社を買収した。
  広告マーケットプレースとは、ウェブサイトの広告枠の売買をネット上で行うサービスのこと。広告枠を売りたいサイト側と、広告を出講したい広告主とが、そ れぞれ金額や期間などの条件を提示し合い、それを自動的にマッチングするサービスだ。電子証券取引所の広告版というようなものだ。
 それにしてもなぜ広告なのか。
 ゲイツ氏は言う。「われわれは、今後10年間で広告がどのように変わるのかに関して幾つものビジョンを持っている。少なくとも若者はデジタル双方向環境に入り、多くのお金がそこに流れ込む。その分野には非常に大きなチャンスが待ち受けているんだ」。
  しかし、チャンスが待ち受けているのはオンライン広告市場だけじゃない、とゲイツ氏は言う。「オンライン広告市場は、広告市場全体から見ればまだまだ小さ い。でもテレビ視聴はどんどんインターネットベースになりつつある。読書だってどんどんスクリーンベースになってきている。双方向のターゲット広告は今は まだ(オンラインの)小さな領域にしか存在しないが、やがて完全に主流になるんだ」と主張している。
 今ネット上の広告の現場に押し寄せている技術革新の波が、いずれテレビ、ラジオ、新聞といったあらゆる媒体にまで波及する。それはマイクロソフトにとっても非常に大きなビジネスの領域になる。だからこそ、そこに全力を傾けるというのだ。
 マイクロソフトのCEO(最高経営責任者)であるスティーブ・バルマー氏は同じ金融アナリスト向けのイベントで、より熱い思いを込めて広告事業に向けた展望を語っている。
  「広告業界ではまだわれわれは小さなプレーヤーに過ぎない」とバルマー氏は言う。「しかし小さなプレーヤーであるということはチャンスでもある。これまで 築き上げたものを失う心配がない分だけ、新しいことにチャレンジできるからだ」。「広告のあり方を変えるような、広告のあり方を再定義するような新しいこ とを手がけてみたい」とバルマー氏の思いは熱い。

▼経済のリワイヤリング

 オンライン広告市場から始まって、テレビ、新聞などのマス媒体の広告市場もデジタル化され、オンライン広告に連携され、つながっていく。そこには大きなビジネスチャンスが待ち受けている。しかしマイクロソフトが見ているのは、そうした広告の分野だけではない。
 ゲイツ氏は、今後社会のありとあらゆる企業のシステム、経済のシステムが1つにつながっていく、と主張する。
  例えばコンビニエンスストアの店頭POSシステム。POSを使えば、日本のどの地域でどの商品が売れているのかがリアルタイムで把握できる。そうしたリア ルタイムデータに広告配信を連動させることも理論的には可能。東北地区での売れ行きが芳しくないのであれば、東北地区のユーザー向けに広告を配信する広告 枠に対する入札価格を吊り上げる、といった具合だ。顧客関係管理システムや、在庫管理システム、各種統計データなども同様に広告配信システムにつながって くるだろう。
 既存のシステムだけではない。これからは、ありとあらゆる情報がデジタル化され、集計可能になっていく。ユー ザーがどこにいるのかとう位置情報はケータイのGPSやsuicaなどの公共交通機関の定期券を使って集めることができる。felicaなどの電子マネー でどんな商品を買ったかという記録も集めようと思えば集めることができるだろう。冷蔵庫にもICチップが搭載され、買い足す必要のある食材を自動認識する ようにもなるだろう。
 こうしたありとあらゆるデータをコンピューターが自動的に分析し、消費者一人一人に合った広告や情報を配信していく時代になるのだ。
  広告の配信先もパソコンやケータイだけではない。カーナビゲーションの画面や、エレベーターの電子ディスプレーなどにも、利用者の属性に狙いを定めた広告 が表示されるようになるだろう。電車内の吊り革広告や街頭のビルボード、看板なども、電子ディスプレー化が進んでいくことだろう。
 広告という概念を超えたコミュニケーションがあらゆる電子機器を通じて、企業と消費者との間で始まろうとしているのだ。そうしたコミュニケーションを通じて消費者の信頼や愛着を勝ち取った企業が、21世紀の成長企業となるのであろう。
 広告から販売まで1つの配線でつながっていた時代から、無数の機器が複雑につながる、時代へ―。ビル・ゲイツ氏は「今、経済のリワイヤリング(配線組み換え)が行われている」と表現している。
  配線をつなぐ作業は、デジタル化され配線可能な領域から始まり、徐々に経済全体に広がっていくだろう。今すぐにでも配線が可能なのは、オンライン広告の領 域である。広告主、メディア、消費者を結ぶオンライン広告の新しい仕組みが、すべての経済活動をつなぐシステムの中核になる可能性があるわけである。

▼準備は万端。いざ始動

 マイクロソフトはこうしたビジョンに向けて動き始めている。2007年中にも積極的に企業買収を行った。
 最も話題となったのが、大手広告会社アクアンティブ社の買収である。
 マイクロソフトによると、アクアンティブ買収でマイクロソフトは4つの武器を得たという。1つは、広告枠の売り買い機能を持つ広告ネットワーク「DRIVEpm」である。
 2つ目は、「Atlas」と呼ばれる広告配信サーバーと、それが持つデータ、アルゴリズム(計算プログラム)、それに広告主である。
 3つ目は、媒体社と広告主向け各種ツールである。このツールのおかげで、アクアンティブは、媒体社にも広告主にも幅広い影響力を持っている。
 4つ目は、アクアンティブ傘下の広告代理店アベニューAレーザーフィッシュ社である。同社は、世界最大のデジタルメディア広告代理店。ちなみに日本では電通と合弁会社を設立している。
 売り手と買い手を結びつける仕組み、広告配信の仕組み、媒体社・広告主向けツールなどを強化するための買収というわけだ。
  マイクロソフトはこのほかにも、前出の通り広告マーケットプレースのアドECNを買収しているし、2007年5月には、フランスのモバイル広告技術を持つ スクリーン・トニック社を買収したと発表している。スクリーン・トニック社は、モバイルの広告主200社の広告を配信している。モバイル広告は、急成長が 期待される市場である。スクリーン・トニック社は、現在広告主200社の広告を14億ページ分の広告枠に向けて配信している。
  またゲーム内広告のマッシブ社も2006年5月に買収している。マッシブ社は、野球ゲーム内の野球場の広告枠や、ストリートファイトゲーム内のビルボード の広告枠などを、実際に大手企業に広告枠として販売している会社だ。コカコーラの広告など本物の広告を3次元ゲーム内に表示することで、ゲームのリアル感 が増すと評判だ。
 マイクロソフトが2007年3月に開催したウェブセミナーで同社は、マッシブ社がこれまでに100社以上 の大手企業の200件以上の広告キャンペーンをこれまでに展開したと発表している。また7月の金融アナリスト向け会合で、マッシブ社が広告を掲載している ゲームは50本を超えており、年内にはゲーム会社40社以上の協力を受け、広告掲載ゲームの本数が100本以上になる見通しを明らかにしている。
 ゲームを楽しむのは13歳から29歳までの若者層。テレビなどほかの媒体に触れることが少なく最もリーチしずらい消費者層の1つだ。日本ではまだまだこれからの感があるが、米国の広告主はゲーム内広告に熱い視線を送っているようだ。。
 マイクロソフトはまた、インターネット回線技術を使ったテレビ(IPTV)の分野にも力を入れている。IPTVではマイクロソフトは、メディアルームという製品を発表しているが、この分野にもアクアンティブ社のオンデマンド動画広告技術などを取り入れていく考えだ。
  アクアンティブ社、アドECN社、スクリーン・トニック社、マッシブ社・・・。マイクロソフトが構築を目指す広告事業の基本的な要素は手に入れた。同社の 広告を担当するプラットホームズ・アンド・サービシズ部門のプレジデント、ケブン・ジョンソン氏は「明確な戦略も持っている。基本的要素の組み立ては終え た。今は統合を進めている」「これまでは基礎固めの時代。これからは実施モードに入る」と宣言している。マイクロソフトは、戦闘モードに入ったわけだ。

▼IT、広告、メディア企業が参戦

 マイクロソフトほど雄弁に、究極の未来の姿を語るわけではないが、米IT大手はどこも同じように広告関連の企業買収を急いでいる。
  グーグルは2007年2月に、ゲーム内広告のアドスケープ社を2300万ドルで買収、4月にはオンライン広告配信システム大手のダブルクリック社を31億 ドルで買収することで合意している。ダブルクリックは、広告マーケットプレース事業にも乗り出しており、マイクロソフトのadECNとは正面からぶつかり 合うことになる。
 米ヤフーは2007年4月に、広告マーケットプレースで先行していたライトメディア社を完全子会社化した ほか、行動ターゲティング技術を呼ばれる技術を持つブルーリチウム社を同年9月に3億ドルで買収している。行動ターゲティングは、ユーザーのネットサー フィンの履歴から属性を判断する技術。例えば、自動車の新しいモデルに関する記事ばかりを読んでいるユーザーは自動車購入を検討している可能性があると、 属性を判断し、そのユーザーには自動車会社の広告を表示するという技術だ。
 米アメリカ・オンライン(AOL)も、インター ネット接続業者から広告事業に軸足を移そうと考えているようだ。2007年5月には、広告配信技術を持つアドテック社と、モバイル広告技術のサードスク リーンメディア社を買収したのを手始めに、7月にはオンライン広告会社のタコダ社を2億7500万ドルで、11月には検索マーケティングのクイゴ社を3億 4000万ドルで買収している。
 IT企業だけではない。広告大手も動き出した。
 世界4大広 告会社グループの1つ、WWPグループは2007年5月に、オンライン広告技術の老舗24/7リアルメディア社を6億4900万ドルで買収したほか、9月 にはデジタル分野でのブランド構築が得意なスキマティック社を、10月にはコミュニティサイト内での広告が得意なブラスト・ラジウス社を買収している。
 このほかにも広告関連の企業買収は多数報告されている。2007年は世界的には、広告ビジネスがらみの企業買収の年になった。

▼取材過程での不思議なできごと

 こうした経済の配線組み換えは、日本では起こらないのだろうか。
 広告マーケットプレースを手がけるベンチャー企業は幾つか出てきているし、わたしが接触した大手広告代理店幹部とのオフレコベースでの会話の中でも、広告マーケットプレースに対し彼らが興味を持っていることは十分にうかがえる。
  とはいうものの米国のようにIT、広告、メディア企業が同じ領域に入り覇権争いを繰り広げるという事態が日本でも起こりうるのか。もしそうなれば、広告最 大手の電通はどう動くのだろう。ネットメディア最大手のヤフー・ジャパンはどう動くのだろうか。ヤフー・ジャパンを連結子会社として抱える孫正義率いるソ フトバンクはどう動くのだろうか。電通とソフトバンクはスクラムを組むのか。それとも袂を分かつのか。メディア企業、広告会社の未来はどうなるのか。産業 構造はどう変化するのだろうか。
 こうした疑問に対する答えを求めて、2007年夏ごろから本格的な取材を始めた。ところが秋口になり、奇妙なことが起こり始めた。
  まずそれまでこちらからの取材申し込みに積極的に対応してくれていたヤフーの広報担当者からのメールが急によそよそしくなったのだ。それまではこの広報担 当者は「広告マーケットプレースに関しては湯川さんほど詳しく調べている記者さんはいないでしょうから、実際にサービスインする際にはぜひ湯川さんに取材 していただきたいです。動き始めたらトップとのインタビューをセットアップしますね」と言ってくれたものだった。まずヤフーの広告ビジネスについて調べて おこうと思い、広告担当の中堅幹部への取材を広報担当者に申し込んだ。ところがメールの返事は「現在お話できるようなことはございません」という非常に あっけない内容だった。
 また某広告会社の幹部を取材したところ、広告マーケットプレースの話で盛り上がったのだが、翌日になって広告マーケットプレースに関する部分は原稿や音声ファイルから全部削除してほしいとの要請が来た。
 大手広告会社の中堅幹部が、積極的に連絡を問ってくるようになったり、大手広告会社の上層部の人間から米国ヤフーの状況について詳しく質問されるようになった。
 いったい何が起こっているのだろうか。
 答えは簡単だ。情報を出さなくなった会社は、広告マーケットプレースの立ち上げ準備を実際に始めたのだろう。反対に積極的に近づいてくる会社は、買収、提携を検討するため情報収集を始めたのだろう。
 水面化の動きが活発になり始めたわけである。

▼新聞に載らない産業変革の始まり

  こうした日本の取材先に共通することは、あまり多くを語りたがらないということだ。事の重要性はだれもが認識している。ビル・ゲイツの言うように、経済の リワイヤリングの可能性をだれもが認識しているようなのだ。しかし経済のリワイヤリングには、メリットを受ける者がいる半面で、デメリットを受ける者もい る。大々的に発表すれば、いろいろな方面から反対され、計画がつぶされる可能性がある。
 合理性の名の下に劇的な変化が許される米国のビジネス環境とは異なり、日本で合理性だけを追求すれば激しく糾弾されるだろう。
  米国でも日本でも広告業界を核にした産業界の大変化は今後同様に進むだろう。しかし派手な買収などでマスコミを賑わすであろう米国とは異なり、日本では最 初はひっそりと始まるのだと思う。最初は新聞の片隅にしか載らないような小さな提携話が、気がつけば広告業界のインフラ的な役割をになうようになってい く。日本での変革はそのように進む気がする。
 大きく伸びる企業が生まれる一方で、凋落していく企業もあるだろう。「申し訳 ないけど、小さな広告会社は倒産していくかもしれないですね」・・・。取材の中で、複数の大手広告会社の人間の口から出た言葉だ。変革は新しい勝者を生む 一方で、時代の波に乗れない企業を必ず作り出す。
 広告を核にした産業変革の第1章が今、静かに始まろうとしているのだ。

IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1

 昨年秋ごろから次の本のための取材、執筆を始めた。8割ほど原稿ができた時点で米国取材を行ったのだが、米国取材の結果、本の内容を根本的に変更することに決めた。ということで200ページほどの原稿がすべて無駄になった。あまりにもったいないので、だれかの役に立てばということで、これから何回かに分けてここに公開します。未完成原稿なので、事実関係に誤りがあるかもしれませんので、引用などには十分気をつけてください。

◎第1部 過去50年を超える今後5年の変化

第1章 メディア消費の3層が共存する過渡期

▼「われわれの知っている広告の終焉」

  米IBMが非常に興味深いレポートを出している。2007年秋に出たレポートだが、タイトルはずばり「The end of advertising as we know it(われわれの知っている形の広告の終焉)」。「今後の5年間は、広告業界にとって過去50年間以上に変化の多い期間になるだろう」という書き出しで、 広告業界をめぐる技術や環境の変化と、その結果として今後5年間で起こる近未来の可能性を4つ提示している。2つの不確定要素のお陰で、4つのうちどのシ ナリオになるのかは分からない、というわけだ。
 ただ5年以内に通る道筋はどうであれ、その先の究極の広告の形は、明確にイ メージされている。それは、テレビ、ラジオ、新聞、インターネット、モバイル機器、ケータイ電話、店頭端末、デジタルビルボード、電車内スクリーンなど、 ありとあらゆる媒体を通じて、リーチしたい消費者に確実にリーチできる広告である。この究極の広告の形に向かって、広告と広告業界はどのような形で進化す るのか。その進化過程としての予測シナリオを4つ提示しているわけだ。

▼IBMが読む広告、マーケティングの未来

 この究極の広告が実現する未来に、広告、マーケティング担当者の仕事は最終的にどのようなものになっているのだろうか。
 IBMは、未来の広告、マーケティング担当者の仕事ぶりを具体的に次のように予測している。



  ジムは、ある消費財メーカーのマーケティング部門の責任者である。ジムは長年、マーケティング予算の60%をテレビコマーシャルに投入していた。もちろん CM枠は、実際の広告効果にかかわらず、決まった額を支払うことが最初に決まっていた。しかしコマーシャルがだれにリーチできているのか、どの程度効果が あるのか正確なところは、ジムには分からなかった。
 今は、まったく違うアプローチを取っている。広告、マーケティングの効 果に対しても、自信を持てるようになった。テレビ、ラジオ、モバイル機器、出版物、店頭キオスクなどのすべてのメディアを客観的に分析し、どういう形で広 告、マーケティング予算を配分すべきかを決めている。消費者は自らの判断で、マーケティングメッセージに対してどのように接するか、どのメッセージに接す るか、どのメッセージをブロックするか、を決めることができるようになっている。そうした時代になったからこそ、郵便番号をベースにした消費者のひと固ま りにではなく、消費者一人一人にリーチすることが重要になっているのである。
 CCO(Chief Consumer Officer=消費者担当責任者)であるキャシーのおかげで、ジムは社のターゲットである消費者層がどういう人たちであるのか、ターゲット層がどこに向 かっているのか、どうすればターゲット層が接する数多くのメディア機器を通じて彼らの好む方法でリーチすることができるのか、ということを熟知できるよう になっている。消費者の周り、360度すべての方向が、コンテンツや情報で埋め尽くされた環境になっていく中で、消費者のライフスタイルや消費者のおかれ た状況や状況や、場所などに合わせて、マーケティングメッセージもパーソナライズされてきているのだ。
 過去には、マスに リーチできる広告枠を買うことがあった。マスにリーチすれば、その中に存在するであろうターゲット層にもリーチできるだろうと考えたからだ。今は、イン ターネット広告でしか使えなかったターゲティング、効果測定、解析のツールが、あらゆる広告媒体に対しても使えるようになっている。ジムは、ターゲット層 の消費者一人一人に向けた、あらゆるメディアを使った統合的で双方向的なマーケティングプランを作ることができ、広告の表示件数ではなく、消費者に実際に インパクトを与えた広告に対してだけ広告料金を支払えばいいようになっている。ターゲット層の消費者がどのメディアに接触していようと、個人に向けた一貫 したメッセージ、経験を提供できるようになっているのである。
 ジムが発信する広告は、いろいろな形のメッセージの組み合わ せである。特定の層にしか影響のないニッチなコンテンツであったり、番組内でさりげなく商品を見せるプロダクトプレースメントだったり、消費者発信型の広 告だったりする。消費者は、ブログなどの個人メディア上などに、自分のお気に入りの商品や企業の広告や、ブログの読者に合った広告などを掲載するようにな る。消費者自らがどの広告を表示するのかを決めるようになるのである。
 こうした広告の形を組み合わせることで、商品の価値 をよりよく理解してもらえるようになるのだ。こうした広告は、メディア企業や、セミプロ、インフルエンサーなどの個人と一緒になって製作する。広告代理店 を通じたコマーシャル製作よりも、非常に低コストで広告が製作できるからだ。細分化されたターゲット層向けに数多くのバージョンのコマーシャルを製作して も、1つ当たりの制作費が劇的に低化するので、全体の広告予算は以前とそう変わらない。いや、広告効果が高上するので、広告の費用対効果はかえって高上し ているということができる。
 広告効果の測定は、広告をどれだけ多くの人に見てもらえたかではなく、実際に消費者にどれくら いのインパクトを与えたかが基準になるので、広告部門は営業部門と密接な関係を結ぶようになった。販売促進費や、ダイレクトマーケティング費の一部は、広 告部門に移管された。広告効果の測定は、営業部門など、あらゆる部門からのデータを統合し、1ヵ所に集めて分析することのできるマーケティングソフトを 使って行うようになっている。
 またあらゆるメディアや機器の広告枠の売買は、オンラインの広告マーケットプレース上で、 「ダッシュボード」と呼ばれるソフトを使ってリアルタイムに効果測定しながら瞬時に行えるようになっている。「広告の効果があればいいな」と希望する時代 は終わった。マーケティング予算とその効果を完璧にコントロールできる時代になったのだ。


  このIBMの予測には、幾つか興味深いポイントがある。1つは、CCO(消費者担当最高責任者)という役職である。CEO(最高経営責任者)、CTO(最 高技術責任者)、CFO(最高財務責任者)などという役職は、米国企業では一般的だし、日本企業の中にも、こうした肩書きの役職を採用する企業が国際企業 を中心に一部で見られるようになってきた。最近では米国で、CMO(最高マーケティング責任者)という役職を設けるべきだ、という主張を耳にする機会が増 えた。しかし、COOという言葉は、わたしにとって初耳である。
 このレポートの中ではCOOの具体的な役割に対する言及は ないが、恐らく消費者に関するデータを収集、管理することを専門にする役職なのだろう。消費者データを核にしたターゲット広告に期待が高まる中で、経営陣 の中に専門職を設けなければならないほど消費者データの重要性に対する認識が今後ますます高まるであろうというIBMの読みなのだろう。
 実際に消費者のデータ収集、管理、活用が、これからのビジネスの世界での再重要課題になることは間違いない。時代の覇権争いも、この辺りを主戦場に繰り広げられることになるだろう。消費者データの収集、管理、活用に関しては、あとでさらに詳しく議論してみたい。
 このほかにも広告会社の中抜きや、広告マーケットプレース、「ダッシュボード」など、この究極の未来像の中の興味深いポイントについては、あとで詳しく考察してみよう。

ケータイこそが究極のSNS

と、これまで言い続けてきたけど、「?」という反応がほとんど。まあうまく説明できないので、仕方がないとは思うけど・・・。テッククランチが僕よりも上手にその考えをまとめてくれていたので以下、引用。

たとえば教室、パーティー、バー、地下鉄の駅、飛行機、その他なんでもいいいが人の集まる場所に入っていったとき、その場にいる人々のプロフィール 情報が(もちろんプライバシーに関する設定がそのようになっているとして)自由に読めるとしたら? 写真、名前、デート相手になれるかどうか、経歴のレ ジュメなどの情報が入手できるとしたら? その場の性質に合わせて表示されるプロフィールが選択できるようにする必要があるだろう。ビジネス上の会合だっ たら簡潔なLinkedInスタイルが適切だろうし、バーだったら「デート可能」かどうかがわかるFacebookのプロフィールがふさわしい。(中略)ユーザーは自分の周囲の人間の名前をすべて知ることがで きるようになる。(もちろん相手が許可した場合だが)。その相手を知っているのであれば、記憶を新たにする情報が得られ、共通の関心事があれば直接会える ようになる。Facebookで誰かを「poke」するのも面白いが、同じバーで飲んでいる相手だったら、すぐに直接の社交的経験につながるのだからさら にずっと面白い。

こうしたサービスを展開する上で必要なのは、位置情報。GPSかケータイから発信される情報なのか・・・。いずれにせよケータイキャリア主導のサービスになるような気がする。でもキャリアはどこもユーザー囲い込みに熱心だからなぁ・・・。
とりあえずサードパーティがGPS搭載機だけを対象にしたキャリア横断のサービスを始めるんじゃなかろうか。10代向けなら、モバゲータウン辺りだろうか。ビジネスマン向けならtwitterやモバツイにも可能性があるように思う。モバツイを通じて、知り合い同士が急きょ飲み会を始める、というようなことも既に起きているようだし。それを進化させれば、おもしろいサービスができると思うんだけど。
米国は、ソーシャルグラフをパソコン領域からケータイ領域に広げようとするけれど、日本はケータイ領域からパソコン領域に広がっていくかも。日本のケータイのベンチャーに期待しています!がんばって!

セカンドライフが終わったって誰が言った

Snapshot_027  セカンドライフがくるの、こないの、と議論されたころから、わたしの主張は一貫して同じだった。それは「これだけ騒がれるということは、現在はバブルだということ。バブルは必ず弾ける。しかし弾けたあとでセカンドライフの真価がうまれてくるだろう」というものだ。
 その真価とは、「リアルの世界を真似ることではなく、バーチャルの世界ならではの価値をリアルの世界に持ち出すことだ」と私は考えている。その真価が現実になるまで、少なくとも2、3年はかかるのかも知れないと思っていたが、アウトドア製品のECサイト「ナチュラム」が、セカンドライフの中で人気のファッションアイテムをリアルな製品として売り出すべく準備を進めている。
 セカンドライフの中で人気となったゲームが実際のゲームソフトとしてリアル社会で発売された例は過去にもあったが、ゲームソフトのようなデジタル製品ではなく、いわゆる工業製品がセカンドライフ発で製品化されるのは、日本で初めてではなかろうか。ひょっとすると世界初?
 未来学者アルビン・トフラーは著書「第三の波」の中で、消費者が生産者にもなるという「プロシューマー」の台頭を予言したが、プロシューマーはセカンドライフの中から生まれてくるのかもしれない。

 わたしが尊敬する情報社会学の権威、多摩大学の公文俊平氏は、著書『情報社会学序説』(NTT出版)の中で、産業化の成熟局面として「人びとは各種の情報通信機器を購入して使用するようになる一方、コミュニケーションが可能なロボットやソフトウエア・エージェントと共生するようになる。 さらには個人もしくは小集団用の工作機械を使って、さまざまな機器類を自分で製造して使用する。また、それらが生み出すさまざまなサービスを自分で消費す るだけでなく互いに交換したりもするようになると思われる」と予測している

 これを受けてわたしは、拙著「爆発するソーシャルメディア」の中で次のように述べた。

個人用の工作機械をだれもが持つというのはちょっとイメージしづらいのだが、仮想空間の中で自分で作り上げた機械のデザインを、業者が工作機械を使ってそっくりそのまま作ってくれるというサービスは、それほど遠くない将来において実現するのではないだろうか

Hi3600580001  それが、まさに実現しようとしているわけだ。ナチュラムの中島成浩さんによると、同社はアウトドア製品のECサイトと連携する形でアウトドア愛好家向けのブログホスティングも行っている。月間2500万PV、約6500人のブロガーがアウトドア関連の記事を中心に情報発信するコミュニティになっている。そのブログサービス上から日本語で簡単にセカンドライフに登録、移動できるようになっている。

 同社がセカンドライフにを設立したのは2007年12月。サーフィン、ウインドサーフィン、ハングライディング、キャンプなどのアウトドア活動を楽しめる島だ。ナチュラムはもともと釣具が主要商品だったこともあり、今年1月には、凝ったフィッシングゲームを島の目玉としてスタートさせた。ルアーやさおを何種類か用意、川や湖などツリの場所によって最適のルアーやさおを選ぶことで、釣れる確率が変動するようになっている。釣れた魚は、大きさなどでポイントが異なり、ポイントを集めるとリンデルドルと変換が可能だ。

 セカンドライフでは1つの島の運用には1台のサーバーが必要で、1つの島にユーザーが40人以上集まると演算処理速度が低下してしまう。同社によると、フィッシングのサービスイン以降、大変な人気で、開始2週間後に島をもう1つ開設することを決定。今でも1日に1000人以上が利用するセカンドライフ内の人気スポットになっているという。

 中島さんは「決してパブリシティ効果を狙ってのセカンドライフ進出ではなかった」と言う。確かに今年1月には、セカンドライフブームのバブルは既に弾けていた。たとえ人気スポットになったとしても、マスメディアに大きく取り上げられることはない。「実際のビジネスにどうつながるかを考えた上での進出でした」と中島さんは言う。

 同社はメーカーではない。釣具などの大手ブランドを中心に販売する小売業である。しかし小売業者間の価格競争が激しく、利益率は少ない。「以前から独自開発商品を持ちたかった」と中島さんは語る。しかし独自ブランドを展開できるほどブランド力はない。そこで新しい形で自社製品を作る必要があった。

 そこで目をつけたのが、セカンドライフ内のユーザーのクリエイティビティだった。セカンドライフは最初のブームが終わり、セナンドライフ内をただ見て回るだけのユーザーの大半は去っていた。残ったのは、自分で物を作るクリエイターがほとんど。物を作るのが楽しい、というユーザーだ。といってもエンジニアである必要はない。建造物や家具などの物体を1から作るのには、それなりのスキルが必要なのだが、衣類の製作は意外に簡単だという。衣類には型紙が存在し、その型紙に好きなデザインを貼り付けるだけだからだそうだ。特に日本人ユーザーの間では、一般的なユーザーが自らデザインした衣類を売買し合い、コスプレやファッションを楽しむということがアクティビティの中心になっているようだ。

 ナチュラムは、同社の島の中にショッピングモールを作り、ファッション関連の10店舗を開設。セカンドライフ内で人気の10人のファッションデザイナーに無料で入居してもらい、衣服を販売してもらっている。ファッションデザイナーといっても全員素人。現実社会の中で実際にファッションデザイナーとして仕事をしているわけではない。男性は2人ほど。残りは全員女性という。

 ナチュラムは、セカンドライフ内で売れ筋の人気商品の中から現実社会の中でも売れそうな製品を選び、現在、2人のデザイナーの衣類の商品化を進めている。

Snapshot_010  中島さんは「1つは、女性用のシースルーの迷彩服のジャケットなんです。迷彩服をシースルーにするアイデアって、ちょっと思いつかないじゃないですか」と語る。小ロットでも製造してくれるメーカーからは、製造可能という回答を得ており、あとは何着作り、幾らで販売するか、などの詳細をナチュラム側で決めるだけ。「恐らく50着から100着になると思います」と中島氏。8月くらいには、ナチュラムのサイトで販売を開始したいという。Snapshot_012

 「目指すはウェブ2.0的製造業」と中島さんは言う。3ヶ月単位でショッピングセンターの店子に交代してもらい、次から次へとユーザーに自分がデザインした衣類を販売してもらう。「その中の売れ筋商品を、次々に現実社会で製品化するつもり。メガヒットは狙っていない。ロングテール商品でいいんです。こうした形で契約クリエーターを数百人ほど抱えることができれば1つの事業として成立するようになるのではないか、と考えています」と言う。

 クリエイティブなユーザーだけが残ったセカンドライフ内で、フィッシングゲームで集客し、アウトドア好きのコミュニティーを形成。その場で、クリエイター同士での衣類の製作、売買を促進し、人気の商品を現実社会でも商品化する。少数多品種をうまくハンドリングできるプロセスさえ確立できれば、確かに新しいタイプの製造業の確立となるかもしれない。アルビン・トフラーや公文俊平氏が予測した未来が、始まろうとしているのだろうか。

ナチュラムのブログ

Nadeshiko

GPSゲームって?

GPS搭載ケータイなどを使ったロケーション・ベース・サービスが5年間で133億ドル市場になるという米information weekの記事

調査会社ABIリサーチのレポートを紹介する記事だけど、GPSを使ったサービスは次の5つの分野が有望とのこと。

ABI also parsed the LBS market into five segments: personal navigation, friend finder, local information searches, family-tracker applications, and fleet management.

パーソナル・ナビゲーションってナビタイムみたいなものだろう。フレンド・ファインダーは、友人の現在地を表示するサービスということなんだろうなあ。あとローカル検索、家族の現在地把握サービスは、そのまま。フリートマネジメントは、トラックなどの現在地把握、もしくはタクシーなどの配置最適化サービスなんかなんだろう。

で、もっとも有望なのがフリートマネジメント、2番目が雅俗の現在地把握サービスとしている。

それと、GPSゲームとかいうのも出てくるよ、というゲーム会社の人の意見も引用している。

The findings track with what mobile gaming software site GetJar sees among its customer base. GetJar said Thursday that GPS will help grow the mobile applications market.

"This will include both functional applications of the type we all know already, such as navigation, to much more elaborate GPS-based games, where the user location is central to game play," GetJar CEO Ilja Laurs said in a statement.

 フリートマネジメントのような比較的単純なサービスももちろん伸びるんだろうけど、もっと画期的なGPSゲームなんかも盛んになるよ、という話。GPSゲームって、何だ?どんなんだろう。

例えば、友達数人と渋谷の町でかくれんぼして、オニはGPSを頼りにほかの人を探すとか・・・。

あとはケータイを銃に見立てて、射程距離の中に入ってケータイも相手に向けて引き金を引く(ボタンを押す)と、撃たれた相手はゲーム終了となるとか・・・。

そういう感じなんだろうか。それともまだまだ可能性があるんだろうか。


 

Manolo Almagro氏インタビュー-デジタルサイネージ④

Sany0006  デジタルサイネージは店頭や街頭のポスターや看板、サインの代わりに薄型ディスプレーを利用したもので、ディスプレーの価格が低下し始めたことから新しい広告媒体としての実用性が高まり米国で広告主の注目を集め始めている。
 特に店頭の広告とPOSデータの相関関係をリアルタイムで把握できることから、リアルな店舗での販売という最終目的へのコンバージョン効果を測定できる広告として期待が高まっている。
 オンライン広告の分野で広まった結果重視の考え方やそれをサポートする技術が、リアルの店舗にまで波及しようとしているわけだ。
 オンライン広告の分野での覇権をめぐる米IT大手の攻防戦が続く中で、デジタルサイネージの分野は今後どのように変化していくのだろうか。世界の4大広告会社グループの1つ、Publicis Groupe傘下のデジタルサイネージ関連のテクノロジー企業MarketForwardの最高技術責任者Manolo Almagro氏に、技術的側面から見たデジタルサイネージ事業の今後について話を聞いた。

-Marketforwardとはどんな会社?

 デジタルサイネージを専門にした研究開発会社です。親会社はPublicis Groupeで、世界の4大広告会社グループの1つです。Publicis Groupeの傘下には、米メディア・バイイング最大手のStarcomがあります。われわれは1998年、まだ世間がそれほどデジタルサイネージには関心を持っていないころからマグドナルトなどの大手企業のメニューボードなどのデジタルサイネージ事業を手掛けてきました。21世紀間近ということで大手企業は、新しいことにチャレンジしたかったのだと思います。費用対効果が思わしくない中、辛抱強くわれわれによく付き合ってくれたものだと感謝しています。
 デジタルサイネージが注目を集めるようになったのは、ここ2、3年でしょうか。最大の要因は、スクリーン価格の低下です。費用対効果が大幅に改良されたので、デジタルサイネージ事業に乗りだす企業が急増したのです。
 われわれは早くからこの領域に特化してきたので、既に多くのことを学んでこれました。
 われわれが学んだことの1つは、デジタルサイネージは消費者に合ったメッセージを出せるし、出さなければならない媒体だということです。
 例えば、マグドナルドの場合は、朝、昼、深夜でメニューが異なります。すべての時間帯のメニューを表示して顧客を混乱させるより、朝なら朝のメニューだけを表示したほうがいいわけです。またある時間帯はシニア向け価格があるのですが、その時間帯にシニア向けメニューを表示したりします。
 銀行は、地域によって異なる商品のプロモーションを行っています。デジタルサイネージで地域ごとに異なる表示をすることができます。銀行は、目に見える形の商品を売っているわけではないので、店頭でどのようなサインを表示するかが重要になってきます。そういう意味で、デジタルサイネージは銀行向きだといえます。
 銀行のATMでコンピューターが処理中に広告を流したところ、消費者から苦情が寄せられました。「自分のお金をおろすのに、広告を見せるとは何ごとか」と。そこで処理中は、映画の宣伝動画など娯楽性の高い広告を出すようにしました。
 また同じ店の中でも、場所によって表示する内容を変える必要があります。スーパーマーケットや大型店舗では、それぞれの売り場でその売り場にある商品カテゴリーの広告を出すのはもちろんですが、レジの前で待っている人に商品広告を表示してもほとんど効果はありません。顧客は既に購入を済ませているからです。レジでは代わりに映画の宣伝ビデオなどを流すのがいいでしょう。動画もテレビCMのような30秒、15秒のものは好まれません。長くてもせいぜい5秒でしょう。
 デジタルサイネージをどこに表示すると効果があるのかも、これまでの調査で明らかになっています。人間は、常に心地よい姿勢を保っていたい生き物なんです。よく天井からスクリーンをぶら下げているのを見かけますが、高い位置にあるデジタルサイネージは見上げなければならないので、あまり見られないことが分かっています。設置場所で理想的なのは、目の高さより少し高いぐらいのところです。

ー話を少し一般的にしましょう。技術革新で広告業界はどう変わるのでしょうか。

 わたしは広告会社の系列会社の人間なので、広告会社がなくなるとは言えません(笑)。でも業務内容は劇的に変わるでしょうね。
 少なくとも広告配信業務の多くはテクノロジーに取って代わられるでしょう。ほとんどの広告配信、設置業務は自動化できるようになると思います。
 それとウェブ上の各種技術が、小売業の領域に入ってくるでしょう。特定の地域である種のキーワードが特に多く検索され始めたとします。例えばラスベガス地域でどういうわけか「ピザ」というキーワードを検索する人が増えたとします。それなら、ピザの広告がスーパーマーケット内のデジタルサイネージに自動的に表示されればピザの売り上げが伸びるかもしれません。検索キーワードに連動して店頭のデジタルサイネージに関連する広告が表示されるようにするわけです。

ー広告会社や広告主に分かる指標や測定方法をデジタルサイネージの分野でも採用すべきだという意見がありますが。

 確かにCPMなどの指標をデジタルサイネージにも用いると、広告主は他の媒体と簡単に比較できていいでしょう。デジタルサイネージ、テレビ、ウェブサイトをすべてCPMで比較して、どの媒体に幾ら予算を投入すべきか総合的に判断できるというメリットがあります。
 でも店頭のデジタルサイネージは、売上高を見ることで広告効果をすぐに把握できます。1日の終わりに広告と売上高の相関関係を傾向として把握するのではなく、相関関係をリアルタイムで把握できます。ですから1日の途中でも、効果がない広告はすぐに別の広告と変更することが可能なんです。リアルな店舗での売り上げという究極の形のパーフォーマンスペースの広告なんです。
 ウェブ広告のおかげで、広告主はパフォーマンスベースの指標に慣れてきていますし、インプレッションではなくパフォーマンスを要求するようにもなってきています。長い目でみれば、業界全体がパフォーマンスベースの広告の方向に動いていくのだと思います。

ーデジタルサイネージはどれくらい大きな市場になるのでしょうか

今、業界はデジタルサイネージ専門の広告ネットワーク会社が群雄割拠している状態です。ウォルマートの店頭のデジタルサイネージのネットワークを持っているトムソン傘下のPRN社や、デジタルサイネージの広告ネットワーク会社をアグリゲートしているseesaw netwokという会社などが大手ですが、このほかにも小さな広告ネットワークの会社が山のようにあります。
 これらのプレーヤー間での標準化が進まない限り、急成長することはないと思います。余りにも分断されていて、大手広告主や大手代理店にとって取り扱いづらい広告商品になっているからです。
 一方でウェブの領域で、ウェブ2.0の「共有」の考えが広まっています。独自のソフトウエアで顧客を囲い込むことよりも共有できる部分は共有したほうが、全体にとってだけではなく、個々のプレーヤーにとってもメリットが大きいというこをだれもが認識するようになってきたわけです。
 この考えはいずれデジタルサイネージの領域にも広がるのだと思います。
 恐らく大きな機器メーカーがデジタルサイネージ機器のハードやソフトのAPIを公開するのではないでしょうか。もしくはモバイルの分野でグーグルが標準化に動き出したように、デジタルサイネージの領域でもグーグルが標準化を提唱するかもしれません。

ースクリーンに実際に触れなくても、スクリーンの手前で手を振るだけで画面を操作できるような新しい技術も登場していますが、こうした技術はどう思われますか?

 確かに面白いし、少なくとも一時的には消費者の関心を引くと思います。でも目新しいものは、いずれ飽きられるでしょう。

ーではどのような技術に注目していますか?

 デジタルサイネージに役に立ちそうな技術は、ウェブや消費者向け機器の領域に幾らでも存在します。例えば、動画などの容量の大きいファイルを低コストで配信するのはどうすればいいかという問題がありますが、これはビットトレントなどのP2P技術を使えば解決すると思います。まだだれもやっていませんが・・・。
 デジタルサイネージの広告ネットワーク会社は、自社でサーバーを持つか、レンタルしていますが、アマゾン傘下のS3などのウェブ上のストレージサービスを利用してもいいかもしれません。データ量に応じて料金を支払うというS3などの仕組みなら、より安くサービスを構築できます。
 また消費者向けの機器を利用するという手もあります。消費者向け製品は洗練されていますし、価格も低下傾向にあるので、都合がいい。アップルコンピュータがAppleTVの開発者向けAPIをデジタルサイネージ向けに公開するのではないかといううわさがあります。確かにいい話だと思います。AppleTVは、ディスプレー以外のデジタルサイネージの中核部分に必要な部品をすべて備えています。イメージ、動画、テキストメッセージを反復表示するプレイバック・エンジンを始め、時間通りに表示するスケジューラー、基本ソフト、ファイル配信機能など、AppleTVはすべて搭載しているんです。
 古くからデジタルサイネージ機器に取り組んでいる会社は、これまでに開発した特許、ノウハウが資産としてあるので、それを捨てるわけにはいかないでしょうが、これから参入する会社であれば、システムを1から開発するよりAppleTVを買って公開APIに基いてシステムを構築するほうが安くつきます。わたしならそうします。
 それにデジタルサイネージの課題の1つにメンテナンスがあります。機器が大きいので郵送するわけにもいかず、技術者を現場に派遣しなければならない。その費用を考えると、新しいAppleTVを買ったほうが安くつく。ネジ回し1本でAppleTVを取り外せるようにしておけば、素人でもAppleTVを交換するだけでメンテナンスが可能になります。

-マス広告中心の既存の大手広告会社はどの技術分野に力を入れるべきでしょうか?

 大手広告会社の最大の資産は、コンテンツだと思います。広告会社はコンテンツ・マネジメント・システムの開発に力を入れるべきでしょう。
 それとメタ・データに関する技術です。メタ・データを使えば、いろいろな媒体向けに広告を自動生成できるようになります。広告製作のすべてが自動化されるとは思いませんが、かなりの部分は自動化が可能です。
 広告主を理解し広告主にあった総合的な広告プランを作り出せるのは、優秀な広告マンの仕事であり続けるでしょう。でもその広告マンが考え出したイメージに基いて、ありとあらゆる媒体、機器向けに広告の形態を微調整する仕事は、やがて自動化されるでしょう。そうした自動化の実現には、メタデータを用いたコンテンツ・マネジメント・システムが必要になります。

ー広告会社はグーグルと戦うべきではないのでしょうか?

 大手広告会社グループの中には、グーグルに対抗する姿勢を見せているところもありますが、無駄なことだと思います。戦うよりも協力し合ったほうが、得るものが大きいように思います。Publicis Groupeはグーグルと協力体制を築いています。エンジニアやブランドコンサルタントの人事交流を行っているのです。

ーデジタルサイネージにいろいろなシステムがつながってくるということですが、どのようなシステムがつながってくるのでしょうか?

 各種測定システムがまずつながってくるでしょうね。在庫管理システムとつながって、在庫状態によって広告の内容が変わったりするでしょう。
 顔認証技術によって、何人の人が広告を見ているのか、広告を見ているのは男か女か、何歳くらいかが分かるようになってきています。どんな人が見ているのかによって、広告の内容を変えることができます。店舗内に男性が多くなれば、男性向け広告を多く出し、女性が多くなれば女性向け広告を多くだすことも可能です。
 また赤外線システムで店舗内のどの部分に人が多くいるのかが分かります。重量測定システムでどの棚の商品を手に取ったのかも分かります。こうしたデータと広告を連動させることもできます。
 また外の温度にしたがって、例えば温度が上がれば冷たい飲み物を広告を表示するといったことなどが自動的にできるようになります。
 ケータイの売り場で、ケータイに鎖がついていることがありますが、この鎖が何度引っ張られたかというデータを測定し、それに従って広告の内容を変えることも可能です。

ーどういう場所がデジタルサイネージに向いているのでしょうか。

 人々が何もすることがない状態で待っていなければならないところが有望です。例えばエレベーターの中や病院の待合室などです。
 あとはホテルやカジノ、スポーツ競技場なども設置場所としてはいいでしょう。

執筆中の次の本「経済リワイヤリング-メディアと広告の未来」(仮題)の素材としての原稿です。完全原稿ではありませんので、ご注意ください。誤字、脱字、事実誤認などの指摘、コメント、大歓迎です。


関連する講演もやっています。

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リアルの世界に飛び出したネット広告-デジタルサイネージ①
「小売店舗はテレビを超える広告媒体に」-デジタルサイネージ②
顔認識で人数、性別を把握-デジタルサイネージ③

韓国にはCGMがない?

 先週は韓国に講演で出かけていたんだけど、その際に某ネット企業の幹部から聞いた話で興味深かったものを幾つか紹介。
 まず韓国ではCGMはそれほど発達していないということ。その幹部によると、韓国人は日本人ほど積極的に自分を表現しないという。

 日本人は表現に積極的???

 ほんの2年ほど前なら、「日本人は受身の国民性なんで、総表現者社会なんてこない」、という意見の人のほうが圧倒的に多かった。そこで僕は、拙著爆発するソーシャルメディアで、「日本人にも表現欲求はある。表現欲求は人間の根源的欲求である」と訴えた。でもそんなことしなくても、テクノラティの調べで、日本語ブログのエントリー総数が英語ブログのそれを超えていることが分ってからは、あっという間に世論が変った。「日本人は自ら表現することが苦手」という主張は影をひそめた。まあそれはいいとしても、海外でも日本人は積極的に表現する国民であるという認識が少しずつ広まってきているのを知って、少し驚いた。

 もう一つ興味深かったのは、ポータル大手のダウム・コミュニケーションが、最大手から2位に転落したということ。1位は、ハン・ゲームと検索大手ネイバーが1つになった会社だそうだ。ゲームと検索が相乗効果を上げて売り上げを伸ばしているという。韓国では、検索市場におけるグーグルのシェアは全然低いのだとか。外資系企業の中には英語は得意だけど実績のない人をトップにするところがあるという話をよく聞くけど、それが理由なんだろうか。

顔認識で人数、性別を把握-デジタルサイネージ③

▼小型カメラで人数、性別を認識

 デジタルサイネージがテレビを超える広告媒体になれるのかどうか。それは2つの要素にかかっている。1つは、効果測定手法の確立、もう1つはハード、ソフト、広告配信の標準化である。
 効果測定手法の確立については、世界的な消費財メーカーなどが共同で取り組んでおり、近く実現にこぎつけそうだ。測定手法が標準化されれば、テレビなどの従来からあるメディアと効果を比較できるようになる。
 一方で、防犯用小型ビデオカメラなどを使って人の顔を認識するような最新技術も登場し始めており、これまでにないような広告効果測定手法が確立するかもしれない。より高度な効果測定が可能になれば、メディアとしての価値も高まることになるだろう。

▼大手消費財メーカーが共同で効果測定

 世界的な消費財メーカーなどが効果測定手法の確立を目指して共同で進めているのは、「Pioneering Research for an In-Store Metoric(ストア内での測定方法確立のためのパイオニア的リサーチ)」と呼ばれるプロジェクト。頭文字を取って「PRISM(プリズム)」と呼ばれている。
 プロジェクトを推進するために消費材メーカー大手のP&Gなどが主体になってコンソーシアムを結成しており、コンソーシアムにはコカコーラ、ディズニー、ケロッグなどの大手ブランド12社が参加している。またウォルマート、アルバートソン、ウォルグリーンなどの大手小売店チェーン16社と、広告代理店6社が協力している。
 実際の調査は、調査会社ニールセン・インストアが担当。ニールセンのメレディス・スペクターさんによると、小規模の調査は既に終了し、今は実験を拡大して測定方法などの策定を急ぎ、2008年7月にもサービスを開始する予定という。
 具体的には、166店舗をサンプルとして無作為抽出し、それぞれの店舗の見取り図をデジタルデータとして入手。コーヒーや、コーンフレークなどといった商品カテゴリーの売り場ごとにゾーン分けした見取り図を携帯端末にインストールして係員が店舗に出向き、店舗内での人の流れを記録した。
 商品ごとにゾーンを分けてデータを集めることで、異なる店舗でも同じ商品の売り場に何人の買い物客が足を運んだかを集計できる。特定の売り場に設置されたディスプレーを何人の人が見たのかを測定できるわけだ。こうした係員による集計と、セキュリティ目的で設置されている赤外線センサーを使った人数測定のデータを合わせ、ニールセンが独自開発した計算方式で、広告がリーチできた人数を算出する。
 例えばコーヒー売り場のゾーンに目に10人の買い物客がいて、その売り場にデジタルサイネージが設置されていれば、デジタルサイネージに映し出された広告は10人にリーチしたことになる。その数を166店舗で集計し、広告効果を算出するという具合だ。
 広告効果は、従来型メディアの測定方法であるGRPを採用している。GRPとは、gross rating pointの略で、テレビの場合だと、テレビコマーシャルを放映した本数に、それぞれの番組の視聴率を掛けた総和のこと。「総視聴率」のことだ。
 店舗の場合だと、全米のスーパーマーケットなどで同じ広告を表示し、米国の人口の何割がその広告を何回見たのか、という指標になるわけだ。
 ニールセン・インストアによると、男女8グループに分けてGRPを測定、ターゲット層に与えた影響を測定することができるという。
 またオンライン広告で使用されているCPMという指標も利用できる。CPMはCost Per Milleの頭文字で、1000件ごとのコスト、という意味。オンライン広告では1000ベージビュー当たりの広告料金ということになる。小売店舗のデジタルサイネージの場合だと、1000人に広告を見てもらった場合の広告料金、ということになる。
 従来型マスメディアやオンラインメディアの広告測定と同じ指標を使うことで、他のメディアとの比較が可能になるわけだ。これにより広告主は、テレビからデジタルサイネージまで、あらゆるメディアの広告枠の価格と効果を比較し、予算を割り当てることが可能になる。
 Starcom Worldwide社のJack Sullivanさんは「広告主のほうからデジタルサイネージに手を差し伸べてくれると思ったら大間違い。今までになかった広告メディアが次々と誕生してきているので、効果を比較できないと、広告主は相手にしてくれない。従来からある指標という、広告主に理解できる言葉で語る必要があるんだ」と強調する。

▼年齢、性別をリアルタイムに顔で認識

 ニールセンは、赤外線センサーと人による計測でデータを集めているが、このほかにも小売店舗内でのデータ収集の新技術が次々と登場している。
 米truemedia社は、デジタルサイネージの上に小型カメラを設置し、デジタルサイネージを見ている人の顔を認識する技術を開発した。
 ラスベガスの見本市会場に設置してあった装置で実際に試してみたところ。画面を見つめている人の顔の部分が円で囲まれ、画面を見ている人の人数を正確に把握していた。試しにわたしが顔をそむけると、わたしの顔を囲っていた円が消えた。画面の前に数人立ったときも、画面を見ている顔だけが円で囲まれていた。
 同社の担当者によると、画面を見ている人の数の認識率は95%という。途中で顔をそむけても、30秒以内に視線が画面に戻れば、継続した視聴とみなされる。顔をそむければ顔を囲っている円が消え、視線を戻せば円が現れるが、その場合でも二人が視聴したことにはならないわけだ。
 また顔の特徴のパターンを幾つも記憶させてあるので、年齢、性別などの認識も可能という。今は年齢を大人(13歳以上)と、子供(13歳未満)の2グループで分けており、この2グループの識別率は90%になっている。性別の識別率も90%という。
 また三つ以上に年齢グループを分けて識別したり、人種を識別するサービスも開発中という。
 つまり、画面の前には何人いて、そのうち実際に画面を見ている人は何人で、それぞれが何秒見たか、性別は、年齢グループは、などといった情報をリアルタイムで把握できるわけである。テレビ視聴率は世帯ごとの数字だが、こうした従来型メディアを超える情報の収集がデジタルサイネージでは可能なわけだ。
 顔の写真や動画は一切記録されないし、どこのだれであるのかという個人を特定できる情報は収集しないので、プライバシー侵害の問題もないという。
 リアルタイムでこれらの情報の入手が可能ということは何を意味するのか。オンライン広告などのリアルタイム測定データでも言えることだが、最大のメリットは最適化が可能だということだ。画面を見ている人のうち女性の方が多ければ女性向け宣伝を、男性が多ければ男性向け宣伝を表示することが可能なのだ。
 また複数の広告のパターンを用意しておいて、ネットワークでつながったデジタルサイネージ上で今現在もっともよく見られている広告のパターンを自動的に優先的に表示するような仕組みの構築も可能だ。どのパターンの広告がいいのかを広告マンが決める必要はない。リアルタイムデータの集計で勝手に決まるわけだ。
 おそらくこの種の技術は、家庭内のテレビにも応用され、テレビを見ている人の年来、性別など識別し、見ている人に合ったコマーシャルを流すようになるのだろう。(了)


春以降に刊行予定の「経済リワイヤリング=メディア、広告の未来」(仮題)用の原稿素材です。未完成原稿ですので、引用にはご注意ください。誤字、脱字の指摘を初め、反論、コメントは大歓迎です。



またこのテーマに関する講演も、期間限定で行います。詳しくはこちら

参考記事
リアルの世界に飛び出したネット広告-デジタルサイネージ①
「小売店舗はテレビを超える広告媒体に」-デジタルサイネージ②